2020-01-01から1年間の記事一覧

連載 アナーキー 第13回

⑬ ディガーズの運動はピューリタン革命の最左翼を担った。ディガーズの運動は、中世以来の反封建主義闘争の最後の局面であったと前述した。 しかし、この反封建主義的闘争なるものは本当に終わりを迎えたのであろうか?憎まれるべき封建主義はどこかに消え去…

連載 アナーキー 第12回

⑫ アナキズムの源流は、イギリスのピューリタン革命を担った民衆運動で最も左寄りだと言われいるディガーズに見て取ることができる。 そして、アナキズムの繁忙期は19世紀から20世紀初頭である。 アナキズムの繁忙期の主要人物には、フランスのプルード…

連載 アナーキー 第11回

⑪ セックス・ピストルズ、マルコム・マクラーレン、無政府主義団体(シチュアシオニスト・インターナショナル)、ギー・ドゥボール、レトリスム、イジトール・イズ―、シュルレアリスム、ダダイズム。 これらの活動に共通するのはアナーキーな態度である。ど…

連載 アナーキー 第10回

⑩ シュルレアリストたちの既存の価値観に挑戦する態度は、無意識への傾倒という局面を迎えた。その様子は失敗の趣を呈しているかもしれない。「シュルレアリスムは行き過ぎた」と。 確かに無意識の追及のために、死に向かってしまうというのは良くないことだ…

民主化を閉ざすことはできない

映画「タクシー運転手 約束は海を越えて(原題:택시운전사、英題: A Taxi Driver)」を観た。 この映画は2017年の韓国映画で、1980年に実際に韓国の光州であった光州事件を題材とした映画だ。 1979年に韓国の独裁者だったパク・チョンヒが暗殺されると、その後…

連載 アナーキー 第9回

⑨ 人は無意識に身を任せると、何とも形容しがたい判断をする。否、判断すること自体が無効になるともいえるのかもしれない。 錯乱した自我ではなく、正常な自我でもないもの。それは何か? 自我か混乱して判断を下すのではない。はたまた正常な自我による判…

連載 アナーキー 第8回

⑧ そして、今ここでシュルレアリスムが問題としているのは、前近代からの分離という①の面ではなく、②の面ではないだろうか? つまり近代の合目的性がシュルレアリスムにとっての問題である。そしてそれは近代の特徴でもあるのだ。 目的のために無駄なく動く…

連載 アナーキー 第7回

⑦ 一方、シュルレアリスムはどのような運動だったのだろうか? ダダは、1918年に詩人トリスタン・ツェラによりスイスのチューリヒで「ダダ宣言」をした。これと同じようにシュルレアリスムも、1924年にシュルレアリスム宣言をしている。 シュルレア…

個人と国家

今回は3本の映画について書きたい。その3本の映画とは以下の映画だ。 一つは①「レボリューション‐米国議会に挑んだ女性たち(原題:Knock Down the House)」だ。この映画は、2019年のアメリカ映画で、ネットフリックスの制作した映画であり、2018年の民主党予…

連載 アナーキー 第6回

⑥ ピストルズが存在するよりも前の時代にダダイズムの人々は、キリスト教信者に対して否を突き付けていたのである。ただピストルズのようにキリスト教そのものを否定してはいないが。 既存の体制に否を突き付けるのがダダイズムであると書いた。 しかし、既…

連載 アナーキー 第5回

⑤ ダダイズムもシュルレアリスムもレトリスムも芸術を出発点として既存の体制への反抗を行った。芸術の活動が政治的態度をとったものだったということができる。 ダダやシュルレアリスムは第一次世界大戦(1914~1918)に対する反抗の活動だとみるこ…

連載 アナーキー 第4回

④ セックス・ピストルズが結成されたのは1970年の半ばである、1975年頃である。 セックス・ピストルズの思想面を支えているのは、特にセックス・ピストルズのマネージャーであったマルコム・マクラーレンと、セックス・ピストルズの曲の歌詞を書いて…

連載 アナーキー 第3回

③ マルコム・マクラーレンが所属していたシチュアシオニスト・インターナショナルは、元々反体制の運動だったのである。 反体制側がいかに体制に呑み込まれずにサバイヴしていくか?それがシチュアシオニスト・インターナショナルの態度だと言ってもいいだろ…

狩られる者は、狩る者

映画「クワイエット・プレイス(原題:A Quiet Place)」を観た。 この映画は2018年のアメリカのホラー映画だ。 この映画の主要な人物は長女、次男、三男、四男と、この4人を生み育てた父と母だ。 この映画の舞台は2020年から2021年頃のアメリカと思われる地域…

連載 アナーキー 第2回

➁ セックス・ピストルズは自然発生したバンドではない。セックス・ピストルズは意図的に作り出されたバンドである。 セックス・ピストルズは、ある店を中心として、ある人物によって恣意的に作り出されたバンドである。 その店の名は「SEX」であり、その…

連載 アナーキー 第1回

① アナーキーという言葉をご存じだろうか? アナーキーという言葉は元々、左翼エリート内で使われていた用語である。これを一般に広めたのは、あるパンク・ロック・バンドである。 その名はセックス・ピストルズ。 セックス・ピストルズがレコード会社大手で…

ゾンビ映画を通じた家族物語

映画「カメラを止めるな!」を観た。 この映画は2017年の日本映画で、映画の前半はゾンビ映画を撮影中に本当にゾンビが出現してしまったというゾンビ映画が描かれる。映画の後半では、そのゾンビ映画ができるまでとその映画の撮影の舞台裏が描かれている。 前…

無法者の住む世界

映画「ウインド・リバー(原題:Wind River)」を観た。 この映画は2017年のアメリカ映画で、スリラー・ドラマ・ガン映画だ。この映画の舞台はワイオミング州にあるウインド・リバーという名の先住民保留地だ。 この先住民保留地は、厳しい自然環境で、容易に人…

支配は無秩序を生む

映画「焼肉ドラゴン」を観た。 この映画は2018年の日本映画で、1969年から1971年までの大阪の朝鮮から渡って来た人たちが多く住んでいる貧しい地域を描いたドラマ映画だ。この映画の中心となるのは、大阪空港の傍にある地域の一家族だ。 この家族は夫婦と3人…

権力がコントロールする

映画「1987、ある闘いの真実(原題:1987)」を観た。 この映画は2017年の韓国映画で、1987年に起こった韓国の民主化運動の特定の期間を描いた映画だ。 1987年当時の韓国にはチョン・ドゥファンという非民主的な大統領がいた。この大統領に対峙するのは中央権力…

トランプ大統領とキリスト教福音派の関係についての、ボストン・グローブの記事の訳

キリスト教福音派の反トランプの論説を越えた論争はエスカレートする エレナ・ショア― AP通信 2019年12月22日午後7時24分 (写真下) トランプ大統領とトニー・パーキンス。トニー・パーキンスは、ファミリー・リサーチ・カウンシルの会長である。クリスチャン…

お金はどこまで必要か

映画「クレイジー・リッチ!(原題:Crazy Rich Asians,中国語:摘金奇縁)」を観た。 この映画は2018年のアメリカ映画で、ロマンティック・コメディ映画だ。この映画の主人公はレイチェル・チュウという経済学の教授で、レイチェルはニコラス・ヤンという男性と…

パンクとマスコミの一部としての映画

映画「The Punk Rock Movie」を観た。 この映画は1978年のイギリス映画で、1977年にイギリスのロンドンで起こったパンク・ムーヴメントを当時のパンク・バンドたちのライブ映像をメインとして描いた映画だ。 この映画のほとんどはパンク・バンドの演奏で、時…

甘いメロディとダンスのリズムとインプロヴィゼイションのロック

映画「ザ・ストーン・ローゼス メイド・オブ・ストーン(原題:The Stone Roses:Made of Stone)」を観た。 この映画は2013年のイギリス映画で、イギリスのバンド、ザ・ストーン・ローゼスの再結成を追ったドキュメント映画だ。 ザ・ストーン・ローゼスはイギリ…

反逆者

映画「暴力脱獄(原題:Cool Hand Luke)」を観た。 この映画は1967年のアメリカ映画で、犯罪者矯正用道路補修機関での様子を描いた映画だ。犯罪者矯正用道路補修キャンプとは、いわゆる刑務所のことだ。映画の主人公はルーカス・ジャクソンという男性だ。 先の…

貧困と死刑

映画「冷血(原題:In Cold Blood)」を観た。 この映画は1967年のアメリカ映画で、実際に起こった事件を元に書かれたトルーマン・カポーティの小説の「冷血(In Cold Blood)」を映画化したものだ。 2005年のアメリカ映画である「カポーティ(Capote)」は、トルー…

開眼

映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域(英題:The Square)」を観た。 この映画は2017年のスウェーデンの映画で、風刺ドラマ映画だ。この映画の主人公はクリスティアン・J・ニールセンという中年の男性だ。クリスティアンには2人の娘がいる。妻とは離婚したせいか…

親子の愛情

映画「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(原題:The Florida Project)」を観た。 この映画は2017年のアメリカ映画で、母と娘の家族を描いたドラマ映画だ。母のヘイリーと娘のムーニーはマジック・キャッスルというモーテルに住む2人の家族で、母子だ。 モー…

意図せざる結果

映画「ディザスター・アーティスト(原題:The Disaster Artist)」を観た。 この映画は2017年のアメリカ映画で、映画のジャンルはコメディ映画になる。この映画の主人公は2人いる。グレッグとその友達トーマス・ウィソー(トミー・ウィソー)だ。グレッグとトミ…