反逆者

映画「暴力脱獄(原題:Cool Hand Luke)」を観た。

この映画は1967年のアメリカ映画で、犯罪者矯正用道路補修機関での様子を描いた映画だ。犯罪者矯正用道路補修キャンプとは、いわゆる刑務所のことだ。映画の主人公はルーカス・ジャクソンという男性だ。

先の戦争で軍曹にまで出世した後に2等兵までランクを下げて除隊したという経歴の持ち主だ。ルーカスは戦争で人を殺し、公共物破損の罪で刑務所に入れられた。戦争で人を殺したと書いたが、戦争は人を殺す場なので、当然ルーカスは戦争での殺人の容疑で捕まったわけではない。

ルーカスが捕まったのは人を殺したからではない。ルーカスが捕まったのは人を殺したからではなく、パーキング・メーターを壊して公共物を破損させた罪で捕まったのだ。

殺人より公共物破損の方が罪?そんな馬鹿な。

この映画のタイトルには、クール・ハンド・ラークとあるが、それはルーカスの刑務所での名前だ。クール・ハンドとは賭けのカードのプレイの仕方について他の囚人がルーカスにつけた名前だ。

クール・ハンドとはこんなやり方だ。カードをプレイしている時にルーカスはいきなり大金を賭ける。するとプレイをしている他の人がこう思う。「こいつはこんな大金を賭けているんだからきっと相当良い手を持っているに違いない」と。

ルーカスは大金を賭け続ける。するとプレイをする人が徐々に減っていく。そしてゲームに残るのはルーカスだけになり、ルーカスが勝つ。しかし、ルーカスのカードを見てみると良いカードでは全くない。

ルーカスは自分の状況を周囲より冷静に判断していた。つまりクール・ハンド・ルークなのだ。

この映画の中でのルーカスは、規則や規律に逆らう反逆者としての人物像を持つ。支配者にコントロールされるのではなく、自然のまま生きる。自然のままという言葉には注意が必要なのだが。

なぜなら自然=当たり前であり、それは今まで当然だったことを無批判に受け入れてしまうことを意味するからだ。とにかくルーカスは冷静なだけではなく、最善と思われるありかたに沿って生きているのだ。

この映画の中で描かれる刑務所というのは国家にとって欠かすことのできない暴力装置の1つだ。刑務所という暴力装置は国家を具現化したものの一部だ。この映画で描かれるように、監獄は人の命を直接左右する。

囚人は命までも国の出先機関とも言える看守に握られる。アンジェラ・デイヴィスの「監獄ビジネス」を持ち出すまでもなく、監獄の暴力性はこの映画でもはっきり見て取れるのだ。