支配は無秩序を生む

映画「焼肉ドラゴン」を観た。

この映画は2018年の日本映画で、1969年から1971年までの大阪の朝鮮から渡って来た人たちが多く住んでいる貧しい地域を描いたドラマ映画だ。この映画の中心となるのは、大阪空港の傍にある地域の一家族だ。

この家族は夫婦と3人の娘と1人の息子とから成る家族で、2番目の娘には家族同然の後にその娘の夫となる男性もいる。

さて一体なぜ、朝鮮から日本へ人々は渡って来たのだろうか?新天地での成功を求めて?そういう人たちもいるだろう。もしくは住む場所が無くなってしまったため?そうこの映画で描かれる家族は朝鮮での居場所を失ってしまった人たちだ。

この映画の中で家族の父は語る。「私たちは済州島事件で住む場所が無くなり、日本へ来ました」と。済州島事件とは、朝鮮半島の南にある島である済州島で起こった、島民の虐殺事件だ。

一般にこの事件の期間は1948年4月3日から1954年9月21日とされている。この期間に3万人の島民が死んだとされている。他の説では1948年から1957年までに完全に事件が鎮圧されたとされている。ちなみにこの1948年から1957年までの間に殺された島民の数は8万人だ。

この済州島の事件の背後には、朝鮮半島の南北分断がある。1948年には韓国と北朝鮮ができた年だ。南はアメリカ、北はソ連がバックについている。この時期は占領が行われている最中で、治安も政局により不安定になっていた時期だと思われる。朝鮮半島の混乱の時期だったのだ。

この混乱の元となったのは、国と国との間の戦いであり、国による人々への抑圧だ。国を指向する権力者たちが、なわばりを争う。人々はただ平和を望んでいるだけなのに。

済州島事件での虐殺は、国が南北統一を望む人たちのことを左と決めつけて排除しようとしたことに原因がある。例えばアメリカで行われた共産党員狩り=赤狩りのように。人々は確かに南北統一という形で国という共同体を求めていたのだろう。

しかし、国は国でも支配者が民衆である国と、支配者が一部の選民による場合とでは話が違う。支配者は自ら望んで支配の座から降りようとはしない。

ならば平和を望む人たちが傲慢なのか?それとも支配を望む指導者層が傲慢なのか?無秩序は政府が作り出すものだとレベッカ・ソルニットは著書「災害ユートピア」で述べた。そして政府の生み出した無秩序のケースに、済州島事件も当てはまるのではないか?