無法者の住む世界

映画「ウインド・リバー(原題:Wind River)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で、スリラー・ドラマ・ガン映画だ。この映画の舞台はワイオミング州にあるウインド・リバーという名の先住民保留地だ。

この先住民保留地は、厳しい自然環境で、容易に人の居住を許すような土地ではなく、従ってこの地域には警察官の数も少ない。つまり広い土地に数人しか警官がいないということは、その地域にもし無法者が住んでいたらやりたい放題ということだ。

警官が応援を呼ぼうとしても呼ぶことが無理な土地だ。警官の力が届かない土地がウインド・リバー先住民居留地だということになる。

この映画の主な内容は、そのウインド・リバー先住民居留地に無法者がいて、レイプ事件と殺人事件が起こり、捜査しようにも警察も応援が呼べないし、不利な状況の中でどうするかというものだ。

表向きには一応公正なことをしてくれる警察が機能しない土地で、どう無法者やならず者たちと対決していくかというところにこの映画の焦点は絞られる。

要はこの映画の設定は西部劇と同じなのだ。この映画の中には「カウボーイを殺す奴が俺のヒーロー」という文字が映し出されるシーンがある。カウボーイとは何を指すか?アメリカ白人のことだ。そのアメリカ白人とはもちろんアメリカ先住民の人たちの土地を奪っていった白人たちのことだ。この言葉は、ただアメリカ白人たちがアメリカ大陸で行った残虐な殺戮の事件を示す言葉なのだ。

さてこの映画のクライマックスでは、レイプされ殺された娘を持つ父親の姿がみられる。子供には父と母がいる。子は生物学的な両性の配合でしか今のところ生まれない。人間を目の前にした時明らかなのは、その人には父と母がいる(いた)ということだ。その父母がどんな人物であるか子供には関係ないとしても。

この映画の主人公であるコリー・ランバートという野生生物局のハンターは、無法者の住む世界、そして厳しい自然の両方で生き抜くすべを知っている人物だ。コリーは自分の娘を失っている。

先住民の保留地であるウインド・リバーでは、寒さが非常に厳しい。寒さで呼吸すらできない。ウインド・リバーのマイナス30度の寒さの中で走った人間は、息は凍り付き、肺胞が割れ、その後いくらかの過程を経て血を吐き死ぬ。マイナス30度の世界に逃げ場所はない。

この映画を観た時、映画「アメリカン・スナイパー」の登場人物であるスナイパー、ムスタファを思い出した。無法者たちが住む世界とは一体どのような世界なのだろうか?