連載 アナーキー 第2回

セックス・ピストルズは自然発生したバンドではない。セックス・ピストルズは意図的に作り出されたバンドである。

セックス・ピストルズは、ある店を中心として、ある人物によって恣意的に作り出されたバンドである。

その店の名は「SEX」であり、その店を経営していたのがマルコム・マクラーレンヴィヴィアン・ウェストウッドだった。

特にマルコム・マクラーレンは、無政府主義団体(シチュアシオニスト・インターナショナル 英:Situationist International)に所属していた人物である。

シチュアシオニスト・インターナショナルとはいかなる団体か?

シチュアシオニスト・インターナショナルは、シチュアシオニズムという信条に基づく団体である。

シチュアシオニズムという思想は、ギー・ドゥボールがフランスで創出した運動の軸となるものである。

人々を受動的な立場へと疎外する近代の消費社会(=スペクタクルの社会)の徹底した批判をギー・ドゥボールたちは行った。

スペクタクルの社会、つまり壮大な見世物的社会は、その社会の中に住む人々を疎外する(つまり抑圧する)ので、それに反抗しなければならないというのがギー・ドゥボールの思想である。

スペクタクル社会は人々を抑圧するだけではない。スペクタクル社会という体制に対する反体制的な主張をも、体制的な支配の内に取り込んで、支配を一層強くするような社会である。

消費社会(=資本主義社会)は人々を疎外する。それに反抗するには、スペクタクルを用いてスペクタクルを批判するしかない。それがギー・ドゥボールの著書「スペクタクルの社会」や「スペクタクルの社会についての注解」にみられる戦略である。