連載 アナーキー 第3回

マルコム・マクラーレンが所属していたシチュアシオニスト・インターナショナルは、元々反体制の運動だったのである。

反体制側がいかに体制に呑み込まれずにサバイヴしていくか?それがシチュアシオニスト・インターナショナルの態度だと言ってもいいだろう。

マルコムが用いたシチュアシオニズムは、セックス・ピストルズの政治的態度にも反映されている。

アナーキーという言葉は、無政府主義を指す。それはシチュアシオニストの主張でもある。

セックス・ピストルズは「SEX」という店を中心として作られたバンドであった。マルコムは店に出入りしていたスティーブ・ジョーンズ(ギター)とポール・クック(ドラム)が結成したアマチュア・バンドに、SEXの店員だったグレン・マトロックと、オーディションで選ばれたジョン・ライドンを加えて、セックス・ピストルズというバンドを世に送り出した。

つまり、セックス・ピストルズは最初からマルコムのコントロール下にあったのである。だから、ピストルズはその活動において常に高い緊張感に包まれついには無軌道になり解散したとも言える。

そのバンドがシチュアシオニストの信条でもあるアナーキーを歌うことは少しも不思議なことではない。

シチュアシオニストであるギー・ドゥボールは1950年代初めにフランスの前衛芸術運動レトリスムに加わった。そしてその後その最左派としてアンテルナショナル・シチュアシオニスト(=シチュアシオニスト・インターナショナル)結成し、68年の5月革命などに大きな影響を与えた。

1972年にアンテルナショナル・シチュアシオニストは終わったとされるが、その影響は明らかにセックス・ピストルズにみられるのである。反体制の運動は50年代、60年代そして70年代に受け継がれていったのである。