ガンマン

映画「荒野の用心棒(伊題: Per un pugno di dollari,英題: A Fistful of Dollars)」を観た。

この映画は1966年のイタリア映画で、映画のジャンルはマカロニ・ウェスタンだ。

この映画の舞台は、西部開拓時代で、南北戦争の期間で、なおかつインディアン戦争の最中だ。アメリカの西部開拓時代は1860年から1890年。アメリカの南北戦争1861年から1865年。アメリカのインディアン戦争は1609年から1924年

この映画ではアメリカの南北戦争に関するシーンがあるので、この映画の時代は1860年以降だと思われる。またこの映画ではコルトと呼ばれるタイプの小銃が出てくるし、ウィンチェスターと呼ばれるタイプの銃器も登場する。

コルト社のリボルバーと呼ばれるタイプの銃が人気になったのが1847年ごろ。ウィンチェスター社のライフルが人気になったのが1860年ごろ。この映画に登場する銃は当時の最新のタイプの銃器ということになる。

ちなみにコルト社のリボルバーと呼ばれる銃は当時としては画期的なものだった。それまでの小銃は、銃に弾丸をセットするのが非常に手間だった。銃身に粉を入れて、銃身の先端に発射物を入れて、別の詰め物を叩き込んでというように。

コルト社以前の銃は、熟練者でも1分間に3回発射できる程度だった。それに対して、コルト社のリボルバーは、回転する弾倉を持ち、撃鉄を引き起こすと、弾倉が回転して、次の薬室と銃身が一直線になるように作られていた。

これにより、銃を持つ人は素早く連続して5発から7発の弾丸を打つことができた。そうこの銃なら、この映画の銃撃戦のような素早い銃撃戦が可能になる。つまり1847年までは、この映画のような銃撃戦は不可能だったのだ。

ちなみにコルト社のリボルバーを今のような形にするのに最終的に貢献したのが、テキサス・レンジャーのサミュエル・ウォーカーという人物だ。アメリカ合衆国ネイティブ・アメリカンとの戦争であるセミノール戦争にコルト社の初期のリボルバーが使われて、アメリカ合衆国とメキシコとの戦争である米墨戦争でもコルト社のリボルバーを使用した。

テキサス・レンジャーとそのすぐ後にアメリカ政府がコルト社のリボルバーを無数に購入した。

この映画に登場するのは白人の保安官と、メキシコのギャングたちだ。その間に主人公のアメリカからメキシコにやってきた主人公が割って入る形になる。

西部劇で名作と呼ばれる映画に、この映画と同じくクリント・イーストウッド主演の「許されざる者」がある。そこで主人公とコンビを組むのはモーガン・フリーマンが演ずる黒人のガンマンだ。

黒人のガンマンは実際に存在した。アーカンサスの奴隷の生まれであったバス・リーブスという黒人の保安官がいたことがわかっている。彼は5つのインディアンの言葉を理解していて交渉役を担っていただけに関わらず、ウィンチェスター・ライフルで4分の1マイル離れたところから人を殺すことができた。

また彼は、黒人を殺した白人を捕まえることをしていて、これは当時、白人至上主義とも呼べる時期にしては、並外れたことだと言われている。

銃器の開発が進んで、白人優位の社会で、女と子供は物のように扱われる時代を描いた映画が、この「荒野の用心棒」だ。このような時代に、いわばある意味野蛮な時代に生きたガンマンの生きざまをこの映画は見せてくれる。