アメリカとヨーロッパの侵略

映画「続・夕陽のガンマン(伊題: Il buono, il brutto, il cattivo、英題: The Good, the Bad and the Ugly)」を観た。

この映画は1966年のイタリア、西ドイツ、スペイン、アメリカ合作映画で、映画のジャンルはマカロニ・ウェスタンだ。

この映画の中心となるのは3人の人物だ。トゥーコ・パシフィコという名で、あだ名をネズミと呼ばれる卑劣漢(the ugly)。エンジェルという名で悪玉(the bad)。ブロンディーという名で善玉(the good)。この3人が軸となって映画は進んでいく。

この映画はこの3人の風貌が重要となっている。トゥーコはメキシコの現地人のルーツをもつ人種。エンジェルはメキシコを支配していた西洋のスペイン人やポルトガル人を思わせる。そしてブロンディーは名前からもわかるように金髪の白人だ。

この映画は西部開拓時代の賞金稼ぎの話だ。お金の話があれば飛びつくのがこの3人だ。そしてこの3人の中で汚れ仕事をするのは、メキシコ系のトゥーコだ。あとの2人のエンジェルとブロンディーはトゥーコが汗水たらして稼いだ賞金をかすめ取る。

善玉と映画でブロンディーは表示されるが、実はブロンディーはまったく善玉なのではない。トゥーコに汚れ仕事をさせて、自分は手を汚さないでいいとこどりをするのがブロンディーという男だ。

トゥーコはメキシコ人を表していて、ブロンディーはアメリカ人を、エンジェルはスペイン人やポルトガル人を表していると考えることができる。そうこうこれは西欧によるメキシコの植民地支配を描いた物語なのだ。

映画の最後でトゥーコはこう言う。「ブロンディーは善玉なんかじゃない!!!ブロンディーは悪玉だ!!!」と。このトゥーコのセリフはこの物語の本質をついている。ブロンディーは偽善者だ。きれいごとばかり言うアメリカの偽善者の象徴がブロンディーだ。

この映画の時代背景は、南北戦争北軍の勝利が近づいている時期だ。ちなみにアメリカの西部開拓時代が1860~1890年。アメリカの南北戦争が1861~1865年だ。これと同時にアメリカのインディアン戦争も進行している。米墨戦争が終わったのは1848年だ。

この映画の場所はニューメキシコの辺りだ。ニューメキシコはその名前からもわかるように、以前はアメリカ領ではなくてメキシコ領だった土地だ。もともとはメキシコだった土地なので、メキシコ系の血を引くトゥーコや、スペイン・ポルトガル系のエンジェルがいる。

この映画では銃描写もある。様々なメーカーの変わった銃がお店のショーケースの上に並べられる。トゥーコが銃を求めているこのシーンで、トゥーコが求めている銃は早く正確に短い時間に何発も打つことができる銃だ。

トゥーコはきっとコルト社のコルト・ウォーカー・ハンドガンのような銃を求めていたのだろう。ちなみにこのウォーカーというのは、テキサスレンジャーにいた実在の人物であるサミュエル・ウォーカ―大尉のことだと思われる。テキサスレンジャーはネイティブ・アメリカの人やメキシコ人を虐殺していたことで知られている。

この映画の背景に見られるのは、アメリカやスペイン、ポルトガルの侵略と戦争の歴史だ。この映画の主人公である善玉のブロンディーは全く正義の人物ではない。それは、植民地主義をとったような西欧の歴史の残酷な生き写しだ。