白人至上主義からの決別

映画「SKIN/スキン(原題:Skin)」を観た。

この映画は2018年のアメリカ映画で、映画のジャンルは伝記映画だ。

この映画の主人公はブライオン・“バブズ”・ワイドナーという白人青年だ。この青年ブライオンには特徴がある。それはブライオンがヴィンランダーズ・ソーシャル・クラブという、白人至上主義者のネオ・ナチのグループに所属する青年だということだ。

ブライオンは所属集団の属性からもわかるようにいわゆるネオ・ナチの白人至上主義者だ。ブライオンはバブズというミドルネームを持つ。このバブズというミドルネームは、ブライオンの白人至上主義者、ネオ・ナチとしての名前だ。

ブライオンの仲間の白人至上主義者たちも、また彼の敵である黒人の反ネオ・ナチのグループのリーダーも彼をバブズと呼ぶ。白人至上主義者は慕ってバブズと呼ぶし、彼の敵はブライオンのことを軽蔑してバブズと呼ぶ。

ブライオンはヴィンランダーズの所有する店でタトゥーを人に掘って生活費を稼ぎ、夜は破壊活動を行っている。夜のモスクに身を潜めている不法移民を焼き払おうとしたり、黒人の14歳の少年の顔にナイフで傷を負わせたりしている。

夜のモスクの件は実はブライオンが不法移民に逃げ道を教えて、不法移民は一時的に命が助かっている。しかし、その後に白人至上主義の団体は不法移民を捕らえて殺害している。白人至上主義は排外主義だからだ。

しかしなぜブライオンが白人至上主義の団体から足を洗おうとしたのか?それは、ジュリーという3人の子持ちの女性に恋をしたからだ。その子供の名前はイギー、デジレー、シエラという。そのうちイギーはブライオンの愛犬のボスになつく。

映画の後半はブライオンがジュリーと結婚して家族になり、ブライオン一家と白人至上主義の団体を仕切る夫婦であるフレッドとシャリーン一家の戦いになっていく。ブライオンは家族と共に逃避行のロードムービーも演じる。

この映画は、時間軸が2つ存在する。それはブライアンが白人至上主義の団体と本当に決別するまでの時間軸と、白人至上主義の団体から抜け出して、顔や腕のヒットリアンのシンボルや北欧のファンタジーの紋章を消し終わるまでの時間軸だ。

白人至上主義の団体が義理堅く、残酷にブライオンを追ってくるスリラーの部分に、ブライオンが白人至上主義から決別していくことのメタファーのようなタトゥーの除去が挿入されてくるのが映画の全体的な流れだ。

人は誰しも集団に所属してその掟を生きる。しかし、その所属集団の価値観が、人間の普遍的な価値観、もしくは時代によって作られてきた価値観と合わないときには、そこには齟齬が生じる。軋轢が生じる。

その悲しい物語がこの映画だということができる。この映画にはハロウィンのパーティーのシーンがある。その場面は面白い作りになっていて、この映画の笑えるシーンの一つだ。映画はシリアスなものにある笑いを思い起こさせる。

町山智浩氏が言うように、遠くから観れば喜劇だし、近くで見ると悲劇なのだ。シリアスな映画に笑いがないわけではない。それは、どんな集団にも笑いがあるように。そしてその事実がこの映画の救いなのかもしれない。