良きものを知っているということ

映画「アス(原題:Us)」を観た。

この映画は2019年のアメリカ映画で、映画のジャンルはホラーだ。

この映画の主人公はアディ・ウィルソンという、夫と2人の子供を持つ母親であり、女性だ。夫の名はゲイブと言い、2人の子供は長女と次男でそれぞれ、ゾーラとジェイソンと言う。

この映画の世界にはテザードというクローン人間がいる。クローンたちは、地表の世界の地下に住んでいて、最初彼らは地表の世界の人間たちをコントロールするために存在していた。

人間とそのクローンの間には、何らかの連続性があり、お互いの行動をお互いが制約しあっていることにこの映画ではなっている。

地表の人間がキスをする時には、地下の人間同士もキスをしている。地表の人間と地下の人間は同一だ。なぜなら、母体とクローンだからだ。

当初は人間をコントロールするために政府が作ったクローンたちは、途中から用なしの存在となる。地表の人間が思うように行動するようになり、地下の人間はそのもとに従属することになる。

上下関係が一変して、地下の人間は奴隷同然となる。それはまるで現在のアメリカ黒人の間にある格差を現わしているかのようだ。

2016年1月1日のニューヨーク・タイムズによると、アメリカ黒人の13%が年収10万ドル、21%が7万5千ドルであるのに対して、年収が1万5千ドルのアメリカ黒人が22%存在することを伝えている。

この年収1万5千ドルのアメリカ黒人の割合は、1970年から2014年にかけて4%しか変わっていない。つまり、底辺のアメリカ黒人の数は割合的にはほぼ変化していない。

この記事ではW・E・B・デュボイスの“10番目の才能”について触れている。デュボイスはこの宣言の中で、黒人には高度な教育が必要だという旨のことを述べている。インテリジェンスな人間に黒人もなることが必要だと言っているのだ。

教育を受けた人間は野蛮ではないという前提がここにはあるようだ。否、そこまではデュボイスは言っていないかもしれない。ただ、一流に憧れる人には一流が良いもののように映るのだ。

洗練とは一体なんなのだろうか?この映画の主人公の夫のように、リッチでも下劣な男もいる。インテリが高貴な人間であるということは必ずしも言えない。インテリでも、浅薄な学歴でも、等しく高貴なものを知っているということの方が大切だ。

インテリでも無理に人殺しをしているようでは話にならない。黒人のアンダークラスを嘆いているだけではだめだ。日本にも年収180万程のアンダークラスがいる。世界共通に格差がキーワードである時代でもある。アンダークラスの平和な団結による格差の解決、その連帯の他の階級への伝播が今必要だ。