レイシズムと闘う

映画「招かれざる客(原題:Guess Who’s Coming to Dinner)」を観た。

この映画は1967年のアメリカ映画で、映画のジャンルはドラマだ。

この映画の主人公は、ジョン・プレンティスという医者と、ジョアンナ・ドレイトンという新聞社の経営者の娘だ。2人はハワイで出会って恋に落ち、愛し合うようになり、結婚を考えている仲だ。ジョンは37歳で、ジョアンナは23歳だ。

ジョンはハワイで講演をしていた、その時ジョアンナと出会って、2人はほんの短い時間を共にしただけで、結婚すると決めた。ちなみに、2人はまだ関係を持っていないと映画中では言及される。

この映画の舞台は、ロサンゼルスだ。ハワイからロサンゼルスに帰宅し、ロサンゼルスのジョアンナの自宅に、ジョンを招くところから、この映画は始まる。映画の始まりは、飛行機が、飛んでいるシーンだ。

しかし、どうやらこの2人の結婚は歓迎されるものではないことが、ジョアンナの母親が企画する芸術作品の作品展にいる、ジョアンナの母親の知り合いが、2人を見る表情でわかる。その知り合いは、2人を見て、場違いなものを見るような表情をする。

なぜか? それは2人の人種と関係がある。ジョンは黒人で、ジョアンナは白人だからだ。

この映画が初めてニューヨークで公開されたのは、1967年の12月11日のことだ。1967年とは、7月にデトロイトで暴動が起こった時だ。この暴動は、この映画が公開される5カ月ほど前に起った、黒人への人種差別が原因の映画だ。

この暴動を取り扱った映画に、2018年の映画「デトロイト」がある。この映画「デトロイト」では、黒人に対する白人警官の、人種差別に基づく暴力的な取り締まりが描かれる。1967年当時の白人と黒人との溝が、よくわかる映画になっている。

ちなみにアメリ憲法には修正13条と呼ばれるものがある。その13条では、主体的な意思による隷属以外は認めないという規定がある。それは1865年に作られたもので、奴隷制を禁止するために作られた憲法だ。

憲法は、国民から統治権力への命令だが、統治権力は国民を統治するので、それは国民の義務ともなる。ところで、この13条には隷属がすべての場合に禁止されるのではないという条件が付いている。そう犯罪者は、隷属的な状態においてもいいのだ。

そして、その条件付き隷属からの解放の13条を、悪用しているのが、アメリカ警察だ。アメリカの警察は、黒人がいると無条件にストップ・アンド・フリスクをする。警察は黒人を呼び止めて、強制的にボディチェックをする。そこで、黒人のポケットから薬物が見つかれば、その黒人は白人への隷属状況になる。

強制的なボディチェック。その担保は、黒人が犯罪者であるという先入観だ。黒人は悪いことをするに決まっている。その先入観が支配的なために、黒人への過剰な持ち物チェックが正当化されて、黒人が犯罪者として、警察の隷属状態に置かれる。

そして、その警官の逮捕が、罪のない黒人を逮捕することもある。実際にブラック・パンサー党の人が、無実の罪で44年近く刑務所で独房監禁されている。その人物の名前はアルバート・ウッドフォックス(Albert Woodfox)という。

刑務所の外では、白人による黒人への人種差別で生きづらく、刑務所の中では独房の中に入れられて、その刑務所の中ではレイプがはびこっている。刑務所の中の唯一の希望は、言葉の学習だったとウッドフォックス氏は語っている。

映画「招かれざる客」は、人種差別の人種隔離政策に特にポイントをあてているように思われる。アメリカでは、黒人と白人の人種分離が行われていた。黒人と白人は同じトイレは使えないというようなことだ。

その様子は、映画「グリーンブック」「42 世界を変えた男」などでも描かれている。人種隔離は、何かと文章の正確さに問題が指摘されるウィキペディアによると、家、医療、教育、雇用、移送における施設やサービスにおいて行われていたとある。

黒人は十分な給料を得ることができる職につけず、そのために家賃の安い家にしか住めず、白人ばかりが住む地域に住むと差別の標的になり、十分な医療を受けることが保証されず、黒人は白人の通う学校には入れず、飛行機に乗る際も黒人よりも白人の客が優遇される。

このような状況は、映画やニュースや論文などで読んだり観たりした記憶が、私の記憶間違いでなければあるので、このウィキペディアの記述は、間違った記述ではないように思う。アメリカの人種隔離政策は徹底的に黒人を白人から差別するものだった。

人種分離の対象になったのは、黒人だけではない。白人以外のアメリカに住む人種が、分離政策の対象になっている。ヒスパニック、アジア系、インディオの人々などがその対象だ。

白人は奴隷制を築いたことからもわかるように、人種の違いを社会階層の違いに変換し、白人以外の人種や、白人でも劣った地域、民族とされる人々を作り出して、その人たちに重労働や危険な仕事、誰もやりたがらない仕事をやらせた。

階級の上に白人の特権階級を置くために、白人は奴隷制を作り、差別を行った。白人の欲が、奴隷制を作り上げ、人種差別を行い、人種隔離政策を作り出した。憲法修正13条ができた後も、13条を正式に認めない州が1995年まで存在した。経済的誘引や人間の思い込みは、憲法よりも強いということになる。

この映画「招かれざる客」では、ジョンとジョアンナの結婚に反対する人物が存在する。それは、ジョンの黒人の親夫婦だったり、ジョアンナの父親だったり、ジョアンナの家の黒人のメイドさんだったりする。

面白いのは、マチルダ・ビンクスという、この黒人の女性のメイドさんは、ジョンのことを女たらしで、白人に媚びを売るいけ好かない黒人だと、ジョンのことを思っていることだ。マチルダは「ブラック・パワー」と映画中に叫ぶ。

ブラック・パワーとは、先に例を上げたブラック・パンサー党でも叫ばれていた言葉だ。マチルダは、明らかにこのことから、白人の黒人差別に頑として戦う闘志だ。マチルダの態度には白人と闘う黒人の白人嫌悪が出ている。白人に媚びを売る黒人は、ブラック・パワーの敵だと言わんばかりに。

ジョアンナの父親は経営者として、ガーディアン紙を育てたと映画中で語られる。ガーディアン紙とは実際に存在するイギリスの新聞社だ。内容はリベラルで、人種差別にはもちろん反対の態度をとっている。

その父親でさえ、アメリカの人種差別の習慣に怖気づいている。習慣が何より怖いものだと、ジョアンナの父親の態度は物語っている。

「息ができない」と言って死んでいったジョージ・フロイドさんの事件が物語るように、この映画「招かれざる客」が作られてから、50年以上たっても、アメリカの現実は変わらない。しかし、レイシストに対する運動はアメリカで今も続いている。