女性の前にある壁と、女性の頭上にある天井

映画「パッドマン 5億人の女性を救った男(原題:Pad Man)」を観た。

この映画は2018年のインド映画で、ラクシュミカント・チャウハンというインドに住む男性についての伝記映画だ。

ラクシュミ=パッドマンであるが、ラクシュミはいかにして5億人の女性を救ったのか?

まずこの5億人という数字だが、これは映画の舞台となっている2001年当時のインド人女性の人口5億1805万4941人とみることができる。つまり、ラクシュミは、インドの全女性を救ったのだということになる。

ではラクシュミは何からインド人女性を救ったのか?それは、ラクシュミは衛生的な生理ナプキンを作って、生理ナプキンが使用できないがために起こる女性の命の危険から、女性たちを抜け出させることに成功したのだ。

2001年当時のインドでは、女性は整理が来ても、生理用ナプキンを使うことはなかった。布や灰などで生理の経血を隠していた。その布や灰が原因となって、女性が妊娠できなくなったり、時には死に至ることもあるのだ。とこの映画の中に登場する医者が説明する。

この医者の説明を聞くまで、ラクシュミは女性の生理の現実を知ることがなかった。多くの男性がそうであるように、生理についての理解は男性にないことは珍しくない。学校教育で、生理について教えられるか、家庭がオープンでない限り、男性が女性の生理について知る機会は少ない。

ましてや生理の状態について知っているのは女性なのだ。なぜなら女性は言うまでもなく生理の当事者なのだから。

しかし、なぜ女性の間に、インドの女性の間に生理ナプキンは普及してなかったのか?それは、生理ナプキンの価格が高額だったことにある。

最終的にラクシュミが発明した方法で作られた生理ナプキンは、2ルピーで売られることになる。しかし、このラクシュミが売り出した2ルピーのナプキン以前にインドで売られていた生理ナプキンの値段は55ルピーだ。

2ルピーの生理ナプキンは一般の家庭でも買える価格なのだが、55ルピーはその25倍であったのだから、一般の家庭で生理ナプキンが買えないのも無理はない話だ。生理ナプキンに出しても良いと思える価格が55ルピーの25分の1だったのだ。

封建的な国では男尊女卑の態度がとられることが多いのだろう。日本でも、中国でも、アメリカも、イギリスも、どこの国でも男性を優位とする体制が残存しているところは多い。

ガラスの天井という言葉があるが、それは女性が今以上の地位に就こうとすると強い抵抗に遭うという言葉だ。女性を抑圧する精神構造、社会構造は変わりつつあるとしても。