警察の腐敗に立ち向かうが、しかし黒人問題には立ち向かわない人物

映画「アンタッチャブル(原題:The Untouchable)」を観た。

この映画は1987年のアメリカ映画で、映画のジャンルは犯罪アクションだ。

この映画の原作は、1957年に出版された映画の原題と同名の本だ。この本はジョー・フェルプスという人物が、エリオット・ネスとオスカー・フラレイという2人の人物を引き合わせたことがきっかけで書かれた。

この映画の題材は1930年代のアメリカの禁酒法の時代に、カナダからのお酒の密輸で儲けていて、そのお金で警察までも買収していたアル・カポネというシカゴのギャングスタ―を脱税の容疑で捕まえたエリオット・ネスについてからとられている。

この原作を映像化したのはこの1987年のブライアン・デ・パルマによるものが最初ではない。この映画はいくつかの段階を経てこの映画へと至っている。

この原作の最初の映像化は、2つのパートからなるCBSのアンタッチャブルスペシャルが最初だ。これは1959年に制作された。そしてこの映像作品はザ・スカーフェイス・モブとして映画館で上映された。

その後にABCでアンタッチャブルのテレビ・シリーズが人気となる。この時、世間から忘れられていたネスの人気が復活した。そしてその後、1987年のブライアン・デ・パルマ監督による映画が作られ、その後1992年に、ザ・ラスト・オブ・モヒカンズのクリストファー・クロウが再びテレビ・シリーズを制作している。

このデ・パルマ版の1987年の作品においては、主人公のエリオット・ネスは銃撃戦を繰り広げて、それがこの映画の見どころにもなっているのだが、実際のエリオット・ネスは銃の携帯はしていなかったそうだ。この事実からもわかるように、この映画の原作は事実通りに書かれたものではないそうだ。

エリオット・ネスは二度の結婚に失敗して、三度目の結婚をしている。ネスはアル・カポネを逮捕した後は、詐欺や偽札を防ぐための透かしの印刷のチェックの新しい技術をうるさく勧誘してなんとか暮らしていた。

The Boxと呼ばれたネスの印刷会社のデスクにある厚紙のファイルには、ニュースの切り抜きのスクラップであふれていた。その中には、盗聴の速記や調査のリポート、ファンからのメールも入っていた。

ネスと共同で執筆したフラレイは、高校時代の恋人と結婚していたが、その女性マリー・エスタラックは車の事故で28歳で死んだ。そしてその時フラレイはもう一人の女性と重婚しており、その女性はフラレイに騙されていて、中絶した後、実家に帰り41歳で首を吊って亡くなっている。その女性の名前はマリー・アン・セカーラクという。

この映画で取り上げられるのは警察の腐敗だ。今アメリカでは警察の黒人に対する不当な扱いが問題になり、ブラック・ライブス・マターという運動が起こっている。現在は黒人たちを中心としてアメリカの市民が警官に向かって立ち上がっている。

ネスは当時の腐敗した警察に対して立ち上がった人物だった。その当時の警察は、密輸や犯罪で何とか生活をしていた労働者階級の移民や、人種的マイノリティからお金を巻き上げていた。警察は秘密でそのような人たちを拷問して恐喝していた。

そのような状態をネスの先生であるオーガスト・ボルマーという人物は好ましく思っていなかった。ボルマーは、極端な場合を除いて人を攻撃するなと言った。対立を和らげて、ルーツが原因の犯罪をただし、マイナーな違反の市民は刑務所に入れるなと言った。

しかしそのような教えを受けたネスにも欠点はある。それはネスの黒人に対する扱いだ。ネスは自分のチームに黒人を入れなっただけでなく、そのチームの一員が黒人を殺して首になっている。その黒人を撃った人物の名前はフランク・グリーンで、撃たれて死亡した黒人の名前はジョセフ・フォアマンで事件当時23歳だった。

理想に燃えていたネスにも欠点があった。それは黒人差別で、今でも警官の間では黒人差別が根強く残っている。そしてそれが、この映画と原題を結び付けている負の歴史だ。