魂は贈り物

映画「ベン・イズ・バック(原題:Ben Is Back)」を観た。

この映画は2018年のアメリカ映画で、薬物依存者とその家族や麻薬を供給するグループについての映画だ。この映画の主人公はホリーという女性だ。ホリーはニールと結婚しており、ホリーとニールの間には、それぞれ2人ずつの連れ子がいる。

ホリーの連れ子はベンとアイヴィーで、ニールの連れ子はリアームとレイシーだ。この映画のタイトルにあるベンとは、ホリーの連れ子の長兄だ。

映画はベンが薬物治療の施設から出て、実家に帰ってきたクリスマス・イヴから始まり、クリスマスの朝に終わる。クリスマスにはベンの命が贈られることになる。ベンの肉体に。それがこの映画のクライマックスだ。

この世界には人間が中毒になる物質があり、中毒が元で死に至る物質もある。ベンがはまっていったのは中毒になると死に至る薬物だ。アメリカでは大麻は合法である州もある。大麻マリファナとも呼ばれる。

マリファナに依存症はないのか?マリファナに依存性はある。あるデータによると、マリファナの依存症を示す値は10%だ。これと比較するために、いくつかの合法的なものの例を上げるならば、アルコールの依存率は15%、煙草の依存率は32%だ。これに比べて非合法的なコカインの依存率は17%だ。

マリファナは依存率が煙草やアルコールと比べて低いと言える。常用することによる肉体への影響だが、煙草は肺がんの原因となるし、アルコールは肝臓を壊す、マリファナは集中力の低下の原因になる。しかし、マリファナが原因で病気になるとは聞いたことがない。

マリファナは煙を吸い込むものなので、肺に悪影響を与えないのだろうか?

ところで、ベンの依存していたものは上の例で言うと、コカインのようなものなのだろう。コカインは即効性の致死へ至る物質だ。しかしなぜベンは薬物に依存するようになったのだろうか?

ホリーはこの映画の中で、ベンが薬物に走るようになったのは、ホリーとベンの父親との離婚が原因だと言っている。つまりベンは自分の環境の急激な変化に耐えることができなかったのだ。

社会学では、社会的地位や役割の移行に注視する見方もある。人は役割の請負が変わる時に、文字通り危機的移行を経験する。ベンも父親の喪失に等しいような現実に今までの子としての役割の変化を受け入れることができなかったのだろう。

それにベンのような10代後半や20代、30代といった年頃は、エネルギーが有り余る時期だ。日々変化していく肉体と精神に、大きな動揺と性的なエネルギーが行き場を見失うことになれば、誰もがベンのようになりうる可能性はあるのだろう。