連載 アナーキー 第20回

イギリスのディガーズに始まったアナキズムの動きは、現在の人類学者デヴィッド・グレーバーまで伝わっている。

アナキズムは権力を嫌い、社会を一点への集中ではなくて、相互扶助から成る連合に撮り社会を作り上げようとする。アナキストの言い分では、人は本来相互扶助的であるからだ。

レベッカ・ソルニットも著書「災害ユートピア」の中で人々が相互扶助でコミュニティを作り上げる様子を描いている。 [レベッカ・ソルニット 訳/高月園子, 2014]

デヴィッド・グレーバーは、資本主義のような強い求心力を持つ体制も、実は相互扶助に基づいて作られていることを語った。

人は本来相互扶助的である。相互扶助に基づき連帯すればそこにコミュニティができあがる。

しかし、今ある貨幣と物との交換までをアナキズムが疑うことは行きすぎなのでないかという意見もある。そう相互扶助があれば、お金は必要ないという考え方を疑問に思う人もいるだろう。

ドガー・ブレグマンは「隷属なき道」という本で、人に必要なのは福祉なのではなく、お金なのだと述べる。ブレグマンはアナキストのように権力に否を突き付けない。

ブレグマンはベーシックインカムという方法を従来の福祉政策の代替案としてこの本の中で提出する。

ブレグマンは「隷属なき道」の中でこう記述している。「ホームレスに3000ポンド給付する実験 2009年5月、ロンドンで1つの実験が行われた。被験者は13人のホームレス男性で、彼らは路上生活のベテランだ。…警備費、訴訟費用、社会福祉費等々、これら13人のトラブルメーカーのために、40万ポンド[当時1ポンドは約150円]以上の公金が使われていた。それも年金である…これらの路上生活者は、フリーマネー(自由に使えるお金)を給付されることになったのだ。…実験開始から1年半後には、13人の路上生活者のうち7人が、屋根のある生活をするようになっていた。彼らは受講登録をし、料理を学び、リハビリをし、家族を訪ね、将来を計画していた。…その費用は?…年間5万ポンドほどだ。つまりそのプロジェクトは13人を救っただけでなく、かなりのコストを削減したのだ。」少々長くなってしまったが、単純に要約するとこうだ。 [ルドガー・ブレグマン 訳/野中香方子, 2017, ページ: 31-33]