人々に何かを考えさせるアートとは

映画「イグジット・スルー・ザ・ギフト・ショップ(原題:Exit Through the Gift Shop)」を観た。

この映画は2010年のアメリカ・イギリス合作映画であり、MBW(ミスター・ブレイン・ウォッシュの略)ことティエリー・グエッタという男がストリート・アートを用いていかにアーティストとして自身を成立させていったかという様子を見せるドキュメンタリー映画である。

この映画で描かれているのはティエリー・グエッタという男のアーティストとしての成立の仕方である。ティエリーの行っているアートの種類はグラフィティにルーツを持つアートといっていい。

グラフィティとは何か?グラフィティとは、ビルの壁や電車などにスプレーやフェルト・ペンを使って絵を描く行為であり、1970年代のニューヨークが発祥の地だとされている。グラフィティはストリート・アートとも呼ばれる。

このストリート・アートの分野で有名な人物がいる。それはこの映画の中に登場するバンクシーという覆面芸術家と、シェパード・フェアリーというアンドレ・ザ・ジャイアントの顔やオベイ(obey)という文字のグラフィティで有名な人物である。

バンクシーやシェパードのストリート・アートはそれを見る人々の間に疑問や論議を起こさせるようなものである。シェパードは言う。「同じ絵が何度も繰り返されていると、人々はそれに対して疑問を持つようになるだろう?」と。

バンクシーの作品である鉄パイプが突き刺さって倒れている電話ボックスの作品を観た女性は言う。「これはきっと電話会社への抗議なのよ」と。

この映画を製作したのはバンクシーというストリート・アーティストである。よってシェパード同様にバンクシーもグラフィティを見た人の中に何かが沸き起こるのを期待していることがうかがうことができる。

さて肝心のティエリーであるが、ティエリーはストリート・アーティストをカメラで映像として残すことを目的としていた。その中で様々なストリート・アーティストと出会い、その中にはバンクシーやシェパード・フェアリーもいた。

ある時バンクシーはティエリーを誘ってディズニー・ランドに“作品”を展示しに(もちろん無断で)行き、グアンダナモ収容所の囚人を思わせる人形をアトラクションの中に設置する。

するとディズニー・ランドはそれを撮影していたティエリーを捕まえる。バンクシーはティエリーの電話の様子がおかしいのを察して、外に逃げ出す。この出来事によりバンクシーはティエリーにひとつ大きな貸しを作る。そしてバンクシーはその貸しを返すために、ティエリーのアーティストとしての出発に助力する。

しかし問題はティエリーの中にあるアートに対する接し方であった。ティエリーのアートは、人々に何か特異な物事を考えさせるきっかけになるのだろうか?それがティエリーのアートの問題点であり、バンクシーたちとの違いである。