2017-01-01から1年間の記事一覧

比喩としての父殺しならぬ母殺し

映画「マイ・マザー(仏題: J'ai tué ma mère,英題:I Killed My Mother)」を観た。 この映画は2009年のカナダ映画で、監督はアデル(歌手)の「Hello」のビデオ・クリップを製作した、クサヴィエ・ドランである。 仏題、英題は両方とも日本語に訳すと“私は母を…

人々に何かを考えさせるアートとは

映画「イグジット・スルー・ザ・ギフト・ショップ(原題:Exit Through the Gift Shop)」を観た。 この映画は2010年のアメリカ・イギリス合作映画であり、MBW(ミスター・ブレイン・ウォッシュの略)ことティエリー・グエッタという男がストリート・アートを用い…

戦争と子供

映画「僕の村は戦場だった(原題音:Ivanovo detstvo,英題:Ivan’s Childhood)」を観た。 この映画は1962年のソビエト連邦のアンドレイ・タルコフスキー監督による映画である。映画の舞台は第2次世界大戦時のロシアがドイツから奪還した領土と、ドイツ軍領土と…

映画の時間軸を辿る

映画「マルホランド・ドライブ(原題:Mullholland Drive)」を観た。 この映画はデヴィッド・リンチ監督による2001年のアメリカ・フランス合作映画で、アメリカの映画産業の中心地ハリウッドを舞台にしたミステリアスな恋愛愛憎劇である。映画のタイトルである…

アンドロイドの人権

映画「バンカー・パレス・ホテル(原題:Bunker Palace Hotel)」を観た。 この映画は1989年製作のフランス映画で、旧体制から新体制への革命の4夜を描いた映画である。タイトルのBunker Palace Hotelとは、核や放射能にも耐える掩蔽壕(えんぺいごう)という地下…

アルジェリア人への弾圧の傷跡

映画「隠された記憶(原題: Caché(仏)、Hidden(英))」を観た。 この映画は2005年に公開されたフランス、オーストリア、イタリア、ドイツの合作映画であり、映画の舞台は2000年代のフランスである。 この映画の題材は1961年10月17日に起きた事件である。その事…

苦難の時にこそ歌う

映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク(原題:Dancer in the Dark)」を観た。 この映画はビョークという世界的に有名な女性ミュージシャンが主演を務めた2000年制作のデンマーク映画である。映画の舞台はアメリカ合衆国の田舎町である。主人公のセルマ・イエスコ…

アブラハムの犠牲

映画「未知への飛行(原題:Fail Safe)」を観た。 この映画は1964年のアメリカ映画で、米ソ冷戦という状況の中高まっていた核戦争の危機を描いた映画である。この映画の中では主にアメリカ大統領とアメリカ空軍そしてソ連側の代表者が描かれている。 第二次世…

世界の終わりに対する執着

映画「博士の異常な愛情または私は如何にして心配することを止めて水爆を愛するようになったか(原題:Dr.Strangelove or :How I Leaned to Stop Worrying and Love the Bomb)」を観た。 この映画は1963年に制作され、1964年に公開されたアメリカ・イギリス合…

神は気まぐれ

映画「アルゴ探険隊の大冒険(原題:Jason and the Argonauts)」を観た。 この映画は1963年のイギリス・アメリカの特撮映画で、ギリシア神話のアルゴナウタイを元に描かれた映画である。アルゴナウタイとはギリシア神話の長編叙事詩に登場する英雄たちの総称(…

介護と精神的疲弊

映画「たたり(原題:Haunting)」を観た。 この映画は1963年のアメリカ合衆国の映画で、丘の家という幽霊屋敷とその屋敷に集まった4人の男女(男2人、女2人)とその屋敷の管理人の夫婦等を描いたホラー映画である。 この映画の主人公は、エレナー・ラーンスとい…

古代の儀式と現代的合理性

映画「血の祝祭日(原題:Blood Feast)」を観た。 この映画は1963年のアメリカ映画で、スプラッター・ムービーの元祖的存在の作品であり、監督はハーシェル・ゴードン・ルイスである。この映画はアメリカ合衆国のとある一時期に起こる連続殺人を描いたものであ…

「母の求めている私」と「理想の私」

映画「わたしに会うまでの1600キロ(原題:Wild)」を観た。 この映画は2014年にアメリカで公開されたロード・ムービーというよりウォーキング・ムービーである。この映画の舞台となるのは、アメリカ合衆国にある長距離自然歩道(The Pacific Crest Trail/パシフ…

不条理なもの

映画「鳥(原題:The Birds)」を観た。 この映画は1963年に公開されたアメリカ映画であり、鳥が人を襲うというパニック、サスペンス映画である。この映画の主要人物はメラニー・ダニエルズとミッチ・ブレナーというカップルで、ミッチの母親であるリディアとミ…

家族には守護者としての父が欠かせないのか?

映画「フレンチアルプスで起きたこと(原題:Force Majeure)」を観た。 この映画には別題として「TOURIST(ツーリスト)」というタイトルがついている。ツーリストとは観光客のことである。この映画は2014年製作のスウェーデン、デンマーク、フランス、ノルウェ…

支配は人を抑圧する

映画「ラブ&マーシー 終わらないメロディー(原題:Love&Mercy The Ture Story of Brian Wilson)」を観た。 この映画は、アメリカ合衆国カルフォルニア州出身のロック・バンド、ザ・ビーチ・ボーイズのメイン・ソング・ライターのブライアン・ウィルソンの半…

暴力の連鎖

映画「ルック・オブ・サイレンス(原題:The Look of Silence)」を観た。 この映画は2014年に公開された、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、インドネシア、イスラエル、オランダ、ノルウェー、イギリス、アメリカの合作ドキュメンタリー映画である…

自由への脱走

映画「大脱走(原題:The Great Escape)」を観た。 この映画は1963年公開のアメリカ映画で、戦争(第二次世界大戦)で捕虜になった連合国軍兵士(つまりナチス・ドイツに捕虜として捕らえられている)たちの脱獄の様子を描いた映画である。 時は第二次世界大戦(193…

非暴力による解放

映画「グローリー 明日への行進(原題:Selma)」を観た。 この映画は、アメリカ大陸(北部)で行われていた黒人差別と、その差別と闘うマーチン・ルーサー・キング・Jrを主とするアメリカ国民たちを描いた作品である。 1619年に北アメリカ大陸へ、アフリカ系黒人…

子供時代を忘れてしまう大人たち

映画「大人は判ってくれない(原題:Les Quatre Cents Coups)」を観た。 この映画は1959年にフランスで制作された映画であり、ある一人の不良少年の成り立ちについての映画である。この映画の原題を直訳すると「400回の殴打」となるそうである。では「400回の…

戦争の不条理さ

映画「史上最大の作戦(原題:Longest Day)」を観た。 この映画は1962年のアメリカ映画であり、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦を描いた映画である。1944年、ヒトラー総督の率いるナチス・ドイツはその勢力を西ヨーロッパまで拡大していた。もう少し西…

愛に狂った男

映画「気狂いピエロ(仏題:Pierrot Le Fou)」を観た。 この映画は1965年のフランス・イタリア合作映画であり、この映画の監督はフランスとスイスの国籍を持つジャン=リュック・ゴダールである。この映画はサスペンスの要素が少し入った恋愛映画である。 この…

互いが互いを必要としている

映画「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男(原題:Get on Up)」を観た。 この映画は、2014年制作の映画であり、この映画の主人公はファンクの帝王と呼ばれた黒人ミュージシャンのジェームス・ブラウンである。 映画の冒頭でいきなりジェームス・ブラウンは…