アンドロイドの人権

映画「バンカー・パレス・ホテル(原題:Bunker Palace Hotel)」を観た。

この映画は1989年製作のフランス映画で、旧体制から新体制への革命の4夜を描いた映画である。タイトルのBunker Palace Hotelとは、核や放射能にも耐える掩蔽壕(えんぺいごう)という地下施設で、その施設は宮殿のように素晴らしいホテルであるというような意味だろう。

さて一体バンカー・パレス・ホテルに泊まる人たちとはどんな人物たちなのか?それは現体制政府の主要な幹部とその身内たちである。何故、高級幹部たちとその家族はバンカー・パレス・ホテルに来たのか?

それは閣下の命令だからである。そもそもバンカー・パレス・ホテルの設定は近未来の世界で、人間たちは体制と反体制とに分かれて戦っていて、政府は事実上機能を停止している状態である。

そして、人間の科学技術は進み、アンドロイドたちが人間の世話をする時代になっている。アンドロイドたちが人間の世話をするとはどういうことか?アンドロイドが人間たちに代わって人間が嫌うようなことまでするのである。

アンドロイドたちは人間の欲求を満たすために動くのである。人間のヒエラルキーのさらに下層にアンドロイドたちの層が存在することになる。

さて何故閣下は地下に主要幹部たちを招いたか?それは閣下が新しい体制を築くため、機能不全に陥っている現体制を葬り去るためである。つまり閣下は主要幹部たちを罠にはめたのである。

しかし、閣下が作った現体制であるのに何故主要幹部たちを閉じ込める必要があるのか?それは閣下が最下層のアンドロイドたちの手に落ちたからである。アンドロイドたちは何らかの手によって、人間である閣下を殺して閣下そっくりなアンドロイドをその地位に就けた。

そして閣下はアンドロイドたちの閣下になる。しかも見た目は人間たちが支持していた閣下と同じなのである。

バンカー・パレス・ホテルの反体制の人たち(ホテルに忍び込んでいた!!)は閣下は倒すものではなくて、閣下を反体制を支持するように説得を試みている。閣下を殺して新体制を作る気などないのだ。

しかし、反体制側が閣下を説得する前にアンドロイドが閣下を殺していたのだが。

実のところ閣下がアンドロイドに殺されたのか、それとも閣下が自ら望んでアンドロイドになったのかはよくわからない。

映画中にはアンドロイドを開発したであろうオルム産業の社長オルムという人物が登場する。オルムは地下壕に主要幹部として置き去りにされる。しかし、新しいオルムが地上で新しい体制の元で運転手として閣下に仕えている。

権力に囚われたオルムのような人物が自らの地位を下げることを望みはしないだろう。よって閣下もオルムもアンドロイドによって排除されたのであろう。