有事、非常事態、軍隊による人権侵害

 映画「マーシャル・ロー(原題:The Siege)」を観た。

 

○siege[名詞] 1.(城塞(じょうさい)などの)包囲攻撃;包囲[攻囲]期間

       2.(つきまとう)病気、災厄、悩み;《米》(災厄・悩みの)長く苦し

                           い期間

       3.[U](執のような)努力

 プログレッシブ英和辞典より

 

○マーシャル・ロー martial law 

 戒厳令。戒厳戦時において兵力をもって一地域あるいは全国を警備する場合において、国民の権利を保障した法律の一部の効力を停止し、行政権司法権の一部ないし全部を軍隊の権力下に移行すること。

 戒厳について規定した法令を戒厳令(martial law)という。本来は極端な治安悪化や暴動を中止させるために行われる。しかし、しばしば、非常事態宣言と共に、軍部によるクーデター(の意)で活用される。

 ウィキペディアより

 

 サウジアラビアのアメリカ海兵隊駐留基地が爆弾テロにあうところから映画は始まる。その報復としてアメリカ軍の将軍は、テロの首謀者を拉致する。その後、拉致されたことによる復讐としてアメリカ国内でテロが発生する。

 アメリカ国内での度重なるテロによりとうとう軍隊が国内の治安維持のために権力を握るようになる。そこでは当然のようにアラブ系の人種が強制的に取り締まりを受けるという、人権侵害が行われる。

 この映画の原題siegeが表してしるように、ニューヨークは包囲され長く苦しい時間が、アメリカを通り過ぎていく。主人公はFBIの捜査官で物語の初めでは主導権を握っているが、非常事態になり主導権は軍部に移る。

 主人公たちは軍部の網の目を潜って、アメリカ軍を抑止することにより、テロそして軍部により異常と化した状況を平常時に戻すために活動する。

 この映画はテロという復讐の連鎖を描くと同時に、テロの首謀者たちを元はアメリカが支援していたこと、その支援の打ち切りが、彼らをテロに走らせたこと(テロに使われる爆弾の作り方はアメリカが彼らに教えたこと)、また軍隊という平常時とは異なった道理(?)で動く人々の存在を教えてくれる。

 最後アメリカ国民がアメリカ国民に銃を向けるシーンがある。映画では、両者が発砲して悲劇が起こるようなことは、兵士たち、FBI捜査官たちの良心によって逃れられる。しかし、テロを引き起こしておいていまさら良心とは遅すぎるのではないのだろうか?