黒人と女性

映画「マーシャル 法廷を変えた男(原題:Marshall)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で、黒人の権利の獲得のために闘い、アメリカの最高裁判所の黒人初の判事になったサー・グット・マーシャルを中心として描かれた伝記映画だ。この映画の中には、黒人の権利の獲得のために闘った2人の弁護士が登場する。

1人は黒人のサー・グット・マーシャルであり、もう1人はユダヤ系の白人であるサム・フリードマンだ。

この2人は映画の舞台となる1941年頃から既に黒人の権利の獲得のために闘い、公民権運動を行っていくことになる。1941年当時アメリカには全米黒人地位向上協会が既に登場していた。この協会の唯一の弁護士であったのが、サー・グット・マーシャルだ。

1941年にアメリカで「グリニッチの悪夢」が起こる。この事件は、白人の既婚女性が、黒人の運転手にレイプされたという内容だった。全米黒人地位向上協会(NAACP)は、いち早く、この事件が黒人であるがゆえの冤罪であることを見抜き、コネチカットにサー・グット・マーシャルを送る。

コネチカットでは、マーシャルは事件の被告となっていたジョセフ・スペル黒人運転手の弁護をしようとするが、コネチカットの判事に、君はコネチカットの弁護士ではないから、裁判で発言することは禁止すると言われる。

そこでマーシャルの代わりに弁護士として闘うのは、コネチカットフリードマンフリードマンの弁護士事務所のサム・フリードマンというユダヤ系の白人男性だ。

映画が進行すると、この事件には黒人差別と同時に、女性差別の背景があることがわかってくる。事件の真相はこうだ。レイプされたと言っているストルービング夫人は実はレイプされておらず、夫人とジョセフの間には合意によるセックスがあったというものだ。

ストルービング夫人は、夫から暴力を受けていた。その上、世間では忌避されている黒人男性とのセックスをしたとばれたら生きてはいけない。女性として虐げられて、その上に人種差別が被さってきたら、通常人は困惑する。ストルービング夫人の動揺には何も理由がないわけではない(しかし、当時の黒人女性はこの2種類の差別の中で生きていたのだが)。

つまり、レイプされてたことを訴えたストルービング夫人もまた、ジョセフと同様に社会の差別により、追い詰められた人だったのだ。

映画中、マーシャルとフリードマンが、白人の男たちに暴力を受けるシーンがある。このような事実の前に、ストルービングの怯え方は裏付けられる。そして、こうも思う人は差別を乗り越えるべきなのだと。