金と権力に支配された人物

映画「バイス(原題:Vice)」を観た。

この映画は2018年のアメリカ映画で、栄華のジャンルは伝記・コメディ・ドラマだ。

この映画の主人公は2001年の9月11日のテロにあった当時に、アメリカの副大統領だったディック・チェイニーという男だ。

このディック・チェイニーという男は、イラク戦争ブッシュ大統領を影で操ることにより行った人物だ。この映画はディック・チェイニーの若い時期から始まる。ディックは名門イェール大学を酒とケンカで退学処分にされて、肉体労働の仕事をしている。

妻のリンからはこれ以上お酒とケンカでライフプランが建てられないような状況になったら別れましょうと怒鳴られる。

映画のナレーションではディックはクズ同然だと言われる。実際にディックはイェール大学は卒業できなかったものの、ワイオミング大学は卒業して大学院まで進んでいる。

ピッカピカのエリートという道筋はたどっていないが、学問的に本当にクズだったかは疑問が残る。

この映画はブッシュ大統領の下に仕えたディック副大統領のことをクズ呼ばわりするのだが、内容的には一応ディックのことをただの馬鹿野郎ではなく、権力欲に憑りつかれた人間として描いているようだ。

ディック・チェイニー共和党の議員だ。となると保守的な価値観を持つ人たちに支持されなければならない。ディックの娘のメアリーは同性愛者だ。するとディックは立場的に微妙になる。

なぜなら共和党を支持する有権者は同性愛を支持しないし、場合によっては同性愛を嫌うからだ。ディックは同性愛に対してどういった態度をとるのか?政治をとるのか?家族をとるのか?

答えは、言ってしまえばディックは良い父親ではなかったということだ。

ディック・チェイニーは9.11テロの例外的状況とでも呼ぶ状況で、政府のコントロール権を握っていた。ディックは政治家になって大統領候補になった頃から、すでに大統領に権力が集中するような状況を望んでいた。

それはアメリカの法律から導くことが可能な考え方で、一元的執政府論というものだ。要するに大統領がすべてを決定できますよという考え方だ。主権者である国民をさしおいて。

チェイニーは、副大統領は行政部にも立法部にも当てはまらないという考え方をする。要は副大統領はフリーで何でもできる状態ということだ。国民のコントロールが届かないのが副大統領(Vice)だ。

ディックはCIAが拷問により聞き出した情報を使って、イラク戦争に突き進む。イラクにテロリストがいるという情報を無理やり引き出してだ。そしてイラクの復興支援にはディックのCEOとしての勤め先である会社ハリバートンが関わっている。

ディックは信念で動いたのか?ディックを動かしたものは金と権力ではないだろうか?