家族の救済

 映画「サイン(原題:Signs)」を観た。

 この映画は2002年に上映されたアメリカ映画で、映画の舞台は現代アメリカの田舎である。この映画はSFミステリーものであり、映画の内容は宇宙人が地球に侵略してきて、それを田舎に住むひとつの家族が体験するというものである。

 この映画で中心となる家族とは、父グラハム、父の弟メリル、父の息子モーガン、父の娘ボーの4人のヘスさん一家である。この映画では宇宙人が地球に侵略してきて立ち去るまでを描いており、世界各地で宇宙人の侵略が起こるものの、物語はアメリカの田舎が中心で、世界各地の映像をテレビを通じて見るという形で話は進んでいく。

 最初、人類は宇宙人の到来を「新しい科学がはじまる」と表現する。つまり宇宙人は地球人に対して友好的で、宇宙人が地球人に知識(科学)を教えてくれると捉えているのである。しかし映画の後半では宇宙人の到来が宇宙人の侵略だと捉えられるようになる。

 宇宙人は地球人を食糧としていると告げられる。空から降りてくるものは果たして何者なのか?人間に友好的な神のような存在なのだろうか?それとも人間と敵対する死神なのか?

主人公のグラハム(家族の父、メリルの兄)は妻を車の事故で失ったことにより神に憎しみを抱き、牧師の職を辞している。グラハムは宇宙人の飛行船が地球の上空に浮かんでいる映像を観てこう言う。

空からやってくる宇宙人は奇跡をもたらす神のような存在か?それとも宇宙人がやってきたのはただの偶然であるのか?偶然であった場合は、幸いである確率は五分五分だ。

グラハムは奇跡を信じるものとそうでないものとに人類を二分する。神を捨てたグラハムは当然神を信じないもの(奇跡を信じないもの)に分類される。

映画のラストシーンで、宇宙人の腕の中にいる息子を見たグラハムは、妻の最後の言葉を思い出す。「グラハムは見て、メリルは打って」。この言葉通りにグラハムは宇宙人の状況を見て、宇宙人は息子に危害を加えるものであると見る。グラハムはメリルに、昔野球でホームランを打っていた時のように宇宙人を叩きのめすように「打て」という。

その選択の結果、息子は命を救われ、グラハムは家族を守っている何かを信じるようになるし、メリルは、かつて野球で輝いていたという捨てがたいメリルを足止めしているような過去と決別する。

 

※グラハムの妻は未来を預言した。預言者である。それは神が妻に預言をさせたということだろう。生身の体を持つ妻は神ではないだろうから。つまりグラハムの妻は預言者である。預言者の言葉を信じたグラハムは神(のようなもの)の存在を認めていることになる。つまり映画のラストでグラハムは神(のようなもの)への信仰を取り戻すのである。つまりグラハムもメリルもグラハムの息子同様に映画のラストで”救われた”のである。