アメリカの罪

映画「荒野の誓い(原題:Hostiles)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で、映画のジャンルは西部劇だ。

この映画はrevisionist修正主義の映画だと語られることがある。修正主義とは、過去行われていたことを修正して行うということだ。その修正は、時代に合わせて行われているといっていいい。

修正主義という言葉は、いくつものジャンルで使われている言葉だ。前述した修正主義とは、西部劇に関しての修正主義だ。それはRevisionist Western西部劇の修正主義と呼ばれるものだ。

西部劇の修正主義は1960年代の半ばから、1970年代の初期にかけて起こった。修正主義以前の西部劇では、悪いインディアンを白人の騎兵隊が殺していって、白人が勝って大喜びといったものだった。

しかし、修正主義以後の西部劇は敵と味方の区別が曖昧になる。簡単にいうと登場人物を正義の味方と悪役にはっきりとわけることができなくなった。つまり正義と悪の区別がぼやけた、白と黒で割り切れないグレイの映画表現がされるようになったのが、西部劇の修正主義の映画だ。

西部劇の修正主義は、1960年代中頃から、1970年代の初期までに起こったことだ。だがこの「荒野の誓い」では、それは現代に蘇ったのだ。

「荒野の誓い」では、当初は白人が暴力の被害者で、悪者がコマンチ族のインディアンとして描かれ、コマンチ族の悪者をやっつけるために白人の騎兵隊が登場する。しかし、映画の後半で逆転が起こる。

実は、白人もインディアンを殺して、女性をレイプして、子供を殺してきたことが明確になる。白人は善人ではなかった。ただの人殺しだった。

映画の冒頭でD・H・ロレンスの言葉が引用される。その言葉とはこういったものだ。「アメリカの魂は、孤独で、禁欲的で、人殺しだ。未だに和らがぬ」。

アメリカ人は孤独がゆえに何かに常に怯えている。禁欲的であるがゆえに衝動的にレイプする。つまりアメリカは人殺しだ。これはインディアン戦争が終わった直後のこの映画の1892年のアメリカだけに当てはまることではない。

アメリカはベトナムイラクアメリカ軍を派遣している。アメリカの繁栄のために。そして野蛮人を文明化するために。

アメリカ人にとっては、アメリカと西欧諸国以外は野蛮な国だ。それらの国をアメリカは教化する必要がある。そしておいしいところはアメリカがごっそりいただく。それがアメリカという国だ。

同時にアメリカは移民の国でもある。様々な人たちが住んでいる。中国系、ベトナム系、中東系、アフリカ系、ラテン系の人たちが住む国が他国の権利を蹂躙する。何かがおかしい。