もしも、もう一つの過去があったら

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(原題:Once Upon a Time in Hollywood)」を観た。

この映画は2019年のアメリカ・イギリス映画で、映画の内容はスリラーだ。

この映画のタイトルは、直訳すれば「昔ハリウッドで」となるが、この映画のタイトルの元ネタは実際にある映画からきている。そのルーツとなった映画のタイトルは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(原題:Once Upon a Time in America)」だ。

この映画ワンス…イン・アメリカは、1920年から1933年頃の、禁酒法の時代のアメリカのギャングを描いた映画だ。

ワンス…イン・ハリウッドの監督の名は、クエンティン・タランティーノという。タランティーノは、映画「レザボア・ドックス(原題:Reservoir Dogs)」で一躍有名になった映画監督で、1992年のレザボア以後、「キル・ビル」(2009年)や「ジャンゴ繋がれざる者」(2012年)などの映画を撮っており、映画のファンの中では、当然のようにカルト的な人気を持つ監督だ。

タランティーノ映画には、映画作品へのオマージュというものがみられる。例えば1997年のジャッキー・ブラウンという映画は、1970年代に流行したブラックスプロイテーション映画へのオマージュという形をとっており、実際にブラックスプロイテーション映画で活躍したパム・グリアという女性を主演に起用し、90年代に、ブラックスプロイテーション映画を復活させた。

同時にタランティーノの映画は、仇討の映画であるともいえる。2009年の「イングロリアアス・バスターズ(原題:Inglorious Bastards)」では、ナチを、2012年の「ジャンゴ 繋がれざる者(原題:Django Unchained)」では、黒人奴隷の所有主を、ノックダウンさせている。

タランティーノは映画を通じて、ユダヤ人と黒人の仇を討ったのだ。

さてワンス…イン・ハリウッドでは、映画業界を描くだけでなく、有名なチャールズ・マンソンの洗脳を受けた数人が映画監督として有名なロマン・ポランスキーの妻だったシャロン・ステートを、惨殺したというエピソードをもとに作られている。

映画のオチを言ってしまうが、ワンス…イン・ハリウッドは、現在の時間軸とは違ったパラレル・ワールドを描いた映画、とも言えるのかもしれない。現在とつながる過去とは違った過去が、もしあったら…というのがこのワンス…イン・ハリウッドなのだ。

この映画には、リック・ダルトンという西部劇の俳優と、そのスタント・マンであるクリフ・ブースという登場人物が登場する。この2人が、パラレル・ワールドともいえるこの映画の主人公だ。

この2人が薄汚いヒッピーを、怒鳴り散らしぶん殴る。1960年代のヒッピー・ムーブメントの、闇の部分がチャールズ・マンソンという形で現れているのがこの映画だ。きっとこの映画はヒッピーを悪く言いたいのではない。ただ、やっていいことと悪いことを知るタランティーノは、この映画で裁きを下すのだ。