一人だけで作り上げられたものではないもの

映画「スティーブ・ジョブズ(原題:Steve Jobs)」を観た。

この映画の主人公は映画のタイトルにあるようにスティーブ・ジョブズであり、この映画は2015年の映画で、伝記映画といえる。

スティーブ・ジョブズとは、アップル社を創った創業メンバーの2人の内の1人である。スティーブ・ジョブズは、1976年に友達のスティーブ・ウォズニアックと共に、スティーブ・ジョブズの家の車庫でアップルというホーム・コンピュータを作った。そしてそのコンピューターは人々の間に普及していく。

この映画は3つの部分に分けることができる。この映画はスティーブ・ジョブズが新しい自身の製品を発表する発表会が舞台となっており、その発表会は1984年のマッキントッシュの発表会、1988年のブラック・キューブの発表会、そして1998年のアイ・マックの発表会である。

それぞれの発表会でそれぞれの新しい製品をスティーブ・ジョブズは発表するのだが、その発表会の裏ではスティーブ・ジョブズを中心とした人間模様がある。

この映画の中ではスティーブ・ジョブズという大イノベーターの裏側、つまり交友関係や親子関係、夫婦関係が描かれる。特に目を引くのはスティーブ・ジョブズとその娘リサとの関係である。

1984年のマッキントッシュの発表の会場に訪ねてきた娘にスティーブ・ジョブズはこう言う。「お前の名前はパソコンからとった名前なんだよ」と。ここにはスティーブ・ジョブズの子供に対する態度が現れている。

つまりスティーブ・ジョブズにとってはパソコンが第一で、子供などはその次に来るのもなのだと。この映画に登場するスティーブ・ジョブズは、映画「ソーシャル・ネットワーク」で描かれていたマーク・ザッガーバーグのように人間として問題のある人物として描かれていく。

このままスティーブ・ジョブズは娘に冷たい態度をとり続けるのか?

この映画ではスティーブ・ジョブズ父親として成長していく姿が描かれていく。

映画の最初では「お前の名前はパソコンからとったんだ(つまりパソコンが子供より大切)」と言っていたスティーブ・ジョブズが娘の将来を気にしてこう言う。「学費は俺が払う。そしてお前の持っているそのカセット・テープのプレイヤーに代わるものを俺は作る」と。

子供を愛している証拠として音楽プレイヤーを創るというのがいかにもイノベーターのスティーブ・ジョブズらしい発言である。

スティーブ・ジョブズは娘との関係がうまくいっていないだけでなく、友達や妻との関係もうまくいっていない。創業者の一方であるウォズニアックは言う。「君はアイディアを言っただけで、それを形にしたのは俺じゃないか。君はビートルズで言えばリンゴだ。そしてジョンは俺(ウォズニアック)だ」と。

アップルを作り上げたのは一人の男ではなかったのである。友の姿がそこでははっきりと浮かび上がってくるのである。