理由なき貸し

映画「殺しの分け前/ポイント・ブランク(原題:Point Blank)」を観た。

この映画は1967年のアメリカ映画で、アクション映画だ。この映画の主人公は、プロの強盗のウォーカーという男だ。ウォーカーには友達がいた。マル・リースという男だ。リースはウォーカーに強盗の仕事の協力を頼み、ウォーカーとリースとウォーカーの妻リンと3人でお金の強盗を行う。

その強盗の際にウォーカーはリースとリンに裏切られる。ウォーカーの妻であったリンは、リースとできていて、強盗したお金もリースの手に渡る。

リースはある組織に属している男だった。ウォーカーはそれに対して一匹オオカミ的な存在だ。

この映画はウォーカーが自分の取り分を取り返すという目的を持ち、その筋によって描かれる映画だ。

ウォーカーは強盗した自分の取り分を求めて、リースの所属する組織のトップまで到達する。非合法的な組織は、ボスに対して手下が貸しを借りているというのが常であるらしい。この貸しとは公正なものである必要はない。

そもそも非合法的な集団に守るべき基準などない。あるのはご都合主義の権威主義だけだ。

この映画の中で、部下は上司に貸しを借りているらしい。金の返済のためにリースは強盗をしている。借金の返済のためにリースは強盗したのだ。

リースに金を貸したのがカーターという組織の上部の人間だ。また、カーターも組織の上部の人間に貸しを借りている。カーターはフェアファックスという男に貸しを借りているのだ。部下は常に上司に対して負債を抱えている。

ウォーカーが行く先で、ウォーカーの取り分を持っている人間が死んでいく。ウォーカーが殺すのではなく、フェアファックスの雇った射撃手が、フェアファックス自身の部下を殺していく。

フェアファックスにとって部下たちは自分の取り分を奪う奴らだ。そもそも非合法的組織は、上司と部下の非対称性によって成り立っているのだから。つまり、前述したようにボスに対して部下は常に貸しを借りているということだ。

この不公正な取り引きがはびこる世界で、どのように生き抜いていくかが、ウォーカーのあり方だ。ウォーカーは金のためと言いながら、無駄な殺しをするような強盗ではない。常に注意深く状況を観察し、決して用意された罠にはかからない慎重な男だ。

お金ですべてが手に入るかのような錯覚を誰もが抱くような世の中で、ウォーカーのように生きることはたやすくはないだろう。