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映画の時間軸を辿る

映画「マルホランド・ドライブ(原題:Mullholland Drive)」を観た。

この映画はデヴィッド・リンチ監督による2001年のアメリカ・フランス合作映画で、アメリカの映画産業の中心地ハリウッドを舞台にしたミステリアスな恋愛愛憎劇である。映画のタイトルであるマルホランド・ドライブとはハリウッドが一望できる場所にある道のことであり、そこで起きた交通事故から物語は始まる。

この映画は映画の終盤での種明かしまで謎がある映画となっている。その謎とは映画の中に登場するリタという記憶喪失になっている女性の本当の名前で、またリタとは一体どういう人物なのかも謎となっている。その種明かしが映画の終盤でどっと行われるのである。

この映画を映画のシナリオを無視して実際に進んで行く時間軸通りに並べるとこうである。《ハリウッドの映画界で働く女性ダイアン・セルウィンとカミーラがいた。この2人は愛し合っているように見えたが、実はカミーラはダイアンと違い性愛関係が奔放だった。

ダイアンはカミーラが自分一人を愛しているものだと信じていたが、カミーラはダイアン以外の女性と関係を持ち、また別に映画監督の男性との結婚を発表する。

その事実を知ったダイアンはカミーラに憎しみを抱き、カミーラの殺人を殺し屋に依頼する。そしてダイアンはカミーラの殺人を行ったという殺し屋からの合図を見て、自ら発狂しピストル自殺を遂げる。

そして映画の冒頭となるシーンが流れる。ダイアンの依頼によって死んだと思われていたカミーラは実は生きていたのだ。

しかしカミーラは事故によって記憶喪失になっている。そしてハリウッドの街でカミーラはリタと名乗り、オンタリオからやってきた女優の卵ベティ・エルムスと出会うことになり2人は恋愛関係に発展する。

記憶を失ったカミーラ=リタはベティと共に自らの記憶の糸を導き出そうとする。そしてカミーラ=リタはベティと2人でダイアン・セルウィンの死体を発見するのであった。そして映画の時間軸は、悲劇の死を遂げたダイアンの死に様をカミーラ=リタとベティが目撃することにより、ダイアンの死への弔いとなっている時点で止まる。》

この映画をややこしくしているのは、時間軸が逆から始まり、結果から前提へ移っていく所や、映画の中のベティとダイアンを演じている女優が同一の人物(ナオミ・ワッツ)であるということ、そして映画の各部分に超越的なもの(レストランの裏の黒い人間、カウボーイ、劇場)が登場することによるのだろう。

映画の中の登場人物たちは自分たちの力ではどうにもならないもの(超越的なもの)によって運命付けられている。この映画では超越的なものが映画の設定上の無理矢理さをコントロールするために使われているのである。