技術の崇拝

 映画「マッド・マックス 怒りのデス・ロード(原題:Mad Max;Fury Road)」を劇場で観た。

 この映画は、核戦争で地球が破壊された後を描いた映画である。

 この映画の世界では資源が枯渇しており、見渡す限り辺は砂漠である。かつては草木の緑に溢れていた場所も枯れ果てている。また、核戦争の放射能の影響で、生まれる生物に異形のものが見られたり、生命の長さが通常より短くなっている者たちもいる。

 この映画の主人公はマックスという元警官の男で、過去に妻子を殺された(?)ことにより、今でも殺された時の娘の姿、そしてそのゾンビを幻覚として見ている。

 この映画の話の内容はこうである。ある所に、イモータン・ジョーという支配者からなる集団がある。その集団は武装集団であり、改造された車を乗り回し、近くにいる別の集団と争ったり、また略奪したりしながら生きながらえている。

 支配者であるイモータン・ジョーは、自分の子供を産ませるための妻を5人持っていた。あるときフュオリサという女性隊長は、5人の妻たちを連れて、イモータン・ジョーの砦から逃げ出そうとする。

 フィオリサと5人の妻たちの逃走はすぐにイモータン・ジョーにバレる。そしてイモータン・ジョーは自らの部下たちを引き連れて、フィオリサ隊長と5人の妻たちの追跡に出る。その時にマックスも、イモータン・ジョーの部下であるウォー・ボーイズのニュークスの輸血袋として追跡に連れられて行く。マックスはイモータン・ジョーの部下たちに襲撃され捕まっていたのである。

 フィオリサ隊長と5人の妻たちの追跡劇の中で、マックスは囚われの鎖から解放され、フィオリサと5人の妻たちを助けることになる。

 当初はイモータン・ジョーの砦から離れることを目的としていたフィオリサ隊長たちだったが、フィオリサたちが目指していた緑の土地はすでに無くなっている。マックスはフィオリサに緑のある場所は自分たちが逃げてきイモータン・ジョーの砦の中にあると告げる。

 そして砦に向かい追跡してきたイモータン・ジョーの一団を倒して、フィオリサ隊長は新しく砦のリーダーとして群衆に迎え入れられるのだった。

 イモータン・ジョーは体を白塗りした凶暴な男というだけでなく、水やミルクや種から育つ植物を育てたりできる技術も独占している。イモータン・ジョーはその技術力を支配することにより多くの人を従えることに成功している。その姿は、知を独占する怪物である。

 イモータン・ジョーはまるで神政政治の王のような存在であり、イモータン・ジョーの部下であるウォー・ボーイズたちはイモータン・ジョーを崇拝している。イモータン・ジョーの砦は、大きな岩山の上部にありイモータン・ジョーの意図により、下に住む支配される人々に水が岩山の上部から注がれる。資源を支配するイモータン・ジョーがその場の全てを支配しているのである。

 イモータン・ジョーの集団は音楽を奏でながら略奪をする。その音楽はメタル・ミュージック。一方フィオリサの助けた妻たちは戦いの休憩にオルゴールの優しい音を鳴らす。メタル・ミュージックは悪であると言いたいのではない。ここにはメタル・ミュージックという轟音の音楽とオルゴールの音という対比はあるが、両者とも音楽を愛好する姿勢は同じなのである。メタル・ミュージックは破壊を現し、オルゴールの音は破壊後の再生に向けた静けさを表しているようである。