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悲劇の利益

 映画「地獄の英雄(原題:Ace In The Hole)」を観た。

 この映画は、ビル・ワイルダー監督による1951年のアメリカ映画である。この映画の舞台はニュー・メキシコ州のアルバカーキ付近のエスカデロという(空想上の?)土地で起こった岩穴での(架空の)落盤事故をめぐる物語である。

 この映画の主人公チャールズ・テイタムは元はニュー・ヨークの新聞社で働いている記者であったが、素行が悪く(仕事中の飲食、編集長の嫁との不倫など)新聞社を転々として、ニュー・メキシコのアルバカーキの新聞社で働くことになった人物で、又ニュー・ヨークの新聞社で働くことを胸に抱いている。

 チャールズは取材の途中で偶然遭遇した落盤事故を注目の記事にすることで、ニュー・ヨークの新聞社に返り咲こうとする。しかし、チャールズの前にはこの事故をスクープにするのを妨げる障害があった。

 それは、記事を盛り上げるにはあまりに早く落盤事故が解決してしまうという事態であった。記事が大衆の注目を集めるためには最低7日間は落盤事故にあったレオ・ミノサが救出されてはならないのであった。

 チャールズは12時間もしくは16時間で片付く落盤事故の救出作業を7日間に引き延ばすために、7日間以上かかる救出活動をするように周囲の人たちを誘惑していく。レオ・ミノサの妻にはこう言う。「この事故が注目されれば、事故現場近くの君の店は繁盛する。7日間あれば何千ドルと儲かるぞ」。

 保安官にはこう言う。「次の保安官の再選のためには票がいるだろ?この事故が7日間続けば、注目のまとになる。大事件を取り仕切った保安官として、次の再選は確実だ」。

 救出現場を仕切る人物にも、チャールズの意図を汲み取った保安官がこう言う。「運転手から今の身分にしてやったのは俺だ。もしこの事故の解決に7日かけることができたら、お前の昇進は間違いない」。

 チャールズは保安官に対してこう言う。「切り札は穴の中にある(Ace In The Hole)」と。

 物語はチャールズの思惑通りに進んでいき事故現場には報道関係者や沢山のやじ馬が集まってくる。しかし、映画のラストで悲劇が訪れる。落盤で身動きがとれずに救出を待っていたレオが死ぬのだ。

 チャールズもレオの衰弱する姿に同情し、レオを見返りもしないレオの妻に無理やり、レオからの結婚5周年記念のプレゼントをレオの妻の首に巻き付けて、苦しむ妻にハサミで刺される。

 ある事件が起きるとそれに人が群がる。報道関係者もやじ馬も。その事件を利用して私腹を肥やそうとする人もいるだろう。事件の当事者は一体どのような気持ちでいるのだろうか?誰がそれを気にするのだろうか?