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マッチ・ポンプと刷り込み

 アニメ映画「空飛ぶゆうれい船」を観た。

 この映画の主人公は隼人(はやと)というまだ小学生ぐらいの少年である。この映画は少年である隼人が自分の近親者を殺した犯人を見つけ出し、その敵と対決をするというように描かれている。

 では、一体隼人の敵とは何なのか?簡単に言ってしまえば、主人公(隼人)の敵はボアという海底生命体である。そして主人公とチームを組んで一緒に海底生命体ボアと対決するのがこの映画のタイトルにある「空飛ぶゆうれい船」である。

 この映画の中のボアという巨大な悪は、人々の日常には直接姿を現さない。この諸悪の根源であるボアは、巨大な企業を操ることによって、知らず知らずに人々を迫害、もしくは死に至らしめている。

 諸悪の根源ボアは、自らが操る巨大企業”黒潮”に対して命じる。「大衆をコントロールしてボアの収益を上げろ」と。ボアは巨大企業黒潮を通じて、国家をもコントロールする。ボアは自らの敵となるゆうれい船を大衆の敵に仕立て上げて、ボアの作った「死と破壊」のロボットをゆうれい船の手先として街中を破壊させる(大衆のために戦うゆうれい船を悪に仕立て上げる!!)。そしてそのロボットの相手として国防軍を出動させて、戦わせる(ロボットも国防軍もボアの手先である!!)。

 つまり戦争の自作自演である。ボアは自ら、戦争の元凶と、それに対する正義(もちろんかりそめの)を両方とも作り出している。巨大なマッチ・ポンプ(自分で火を点けて自分で消す)である。

 ボアは国家だけでなく民衆の生命をもコントロールしている。ボアはボア・ジュースという大量摂取すると死に至るジュースを国民に売りつける。映画中のテレビCMでは盛んに「ボア・ジュースを飲むと夢の海底旅行に行ける」とか「ボア・ジュースを飲むと天国に行く心地」というような表現がされる。

 諸悪の根源ボアはボア・ジュースという飲料水を一定期間与えて大衆を死に至らしめると同時に、大衆にそのジュースを売ることで得た収益で自らの力を拡大していく。

 このようなボアの戦略はテレビというメディアを通じて可能になっている。テレビでボア自身に都合が良いものを”これは良いものですだから皆さん飲みましょう”とか”これは悪いものですから絶対に許してはいけません”とか言い、テレビを観ている人にある観念(考え方)を刷り込んでしまうのだ。

 大衆は従順である。巨大なものには逆らいはしない。隼人の育ての父は言う「あれは会長だ。とても偉い人なのだよ」。しかしその会長はボアの支配下にある企業の会長なのである。自らの首を絞めているものを尊敬しているという、なんとも愚かな行為である。

 さてこの話は、この映画の中だけのことなのだろうか?ボアという部分に様々な団体や人間を入れたら、いつもとは違った世界が見えてこないだろうか?