先入観

映画「デトロイト(原題:Detroit)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で犯罪ドラマ映画だ。この映画の中で犯罪を起こすのは警察だ。

この映画の舞台は1967年のアメリカ合衆国ミシガンのデトロイトだ。1967年のデトロイトでは暴動が起こった。この暴動の原因は白人による黒人の人種差別だ。

アメリカではこの時代においても貧困層が都市の中心に集まっていた。社会学で言うならばバージェスのゾーン理論と同じ状態だった。都心に向かって郊外からだんだんと貧困度が高まっていくという説で、同心円からなる図をとることで知られている。

1967年のアメリカ合衆国デトロイトの人々の4割が黒人で警察の95パーセントが白人だった。当時はまだ黒人に対する人種差別が根強い時代だ。白人の中には黒人は犯罪を犯す悪いやつという先入観があった時代だ。

この映画の中で黒人3人を殺す警官の中の1人が映画の冒頭の辺りでこのようなセリフを言う。「(暴動の起こっている状態を見て)見てみろよ。街は無秩序になっている。これは警官たちがしっかりしていないからだ。秩序を取り戻さなければならない」と。

このセリフを聞く者は大きな違和感を抱くだろう。なぜなら、このデトロイトの暴動の原因は警官のうち95パーセントを占めているような白人たちによって引き起こされたのだから。

黒人が罪を犯す?それは白人が黒人をそこまで追い詰めたからでしかない。そもそも白人による黒人への迫害は黒人奴隷時代からだ。アメリカでの奴隷(アフリカ人)の最初の記録は1619年だ。それからアメリカの白人たちは黒人を差別し続けている。

現在でも警官が黒人を特に理由もなく、ただ黒人は怪しいという間違った先入観で黒人を殺す事件がある。アメリカでの黒人への差別は常態化してしまっていたのが1967年の状態だ。

白人は自らが秩序を作り出したと言う。悪い奴がいるから上からの力で抑圧しなければならないと。しかしなぜ悪い奴が出現するのか?それは上からの抑圧があるからだ。

白人は一方的にお前は悪だと宣言する。そして、被差別者を追い詰めることで、被差別者の行き場はなくなる。社会の中でポジションを得ようと黒人は必死になるが、白人の作り出した制度や習慣のせいで黒人たちはにっちもさっちもいかない。

黒人はアメリカでの居場所の獲得のために犯罪を犯すしかなくなる。そう無秩序を作り出すのは、白人たちなのだ。