映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました(原題:Chef)」を観た。
この映画はロサンゼルスの一流レストランで総料理長を務めるカール・キャスパーという男が、一流レストランガロワーズから解雇されて、ほとんど無一文の状態から家族や、仕事仲間の助けをかりて、エル・へフェ(スペイン語でボスという意味)という名の88年製のフードトラックに乗って、人生の再生の旅に出るという話である。
カールが一流レストランから解雇された理由はこうである。料理の批評をしているフード・ブロガーのラムジー・ミシェルという男が一流レストランガロワーズについての記事を書く。それが悪評だったためカールは切れて、批評家に対してツイッターで「お前はクソ野郎だ」というような内容のツイートをしてしまう。
ツイートのダイレクト・メッセージ(特定の相手に非公開でメッセージを送れる。但し相互フォローしていれば)を使うことを知らなかったカールは、自分のツイートが拡散することを知らなかった。
それが原因でレストランの経営者であるオーナー、リーバともめてレストランを解雇されてしまう。しかし、カールはめげなかった。フードトラックに乗ってマイアミからロサンゼルスまでの旅の間にキューバ料理を販売し、その状況を一緒に車に同乗していたカールの息子パーシーがツイートすることにより、カールのフードトラックの評判は広がり、大盛況を得ることになり、最後には自分を酷評したフード・ブロガーのラムジーが資金援助を名乗り出て、エル・へフェという店を出すところで映画は終わる。
この映画で最初から最後まで一貫して描かれるのは、主人公カール・キャスパーとその息子パーシーとの親子関係である。物語の序盤でカールは息子パーシーを敬遠しがちである。自分の父親と多くの時間を過ごしたいと思っている息子パーシーに対して父親であるカールは「今日はこれから仕事があるから」と息子パーシーの誘いを断ってばかりいる。
パーシーはカールと旅行をしたいと思っていたためか、マイアミからロサンゼルスまでフードトラックで旅する話もパーシーは気に入り、カールとパーシーとカールの仕事仲間マーティンとの旅が始まるのであった。
88年製のおんぼろフードトラックの掃除をする時にそれまで優しいだけだった父親カールが息子パーシーに対して厳しく接する。「お前は掃除するんだ!!」「言われたことはしっかりやれ!!」息子パーシーに声を荒げるカール。
その後カールはパーシーに謝罪するが、旅を通じて2人の中は深まっているようである。息子パーシーは、フードトラックの調理も多少手伝い、広報担当としてツイッターで店の情報を発信し続ける。
そんな息子パーシーの姿を見た父親カールは、自らの息子に以前より深い愛情を持つことになり、旅の間だけだと決めていたパーシーのフードトラックの手伝いを、旅が終わってからも続けたいと思うようになる。
それまで息子に優しい態度だけ見せていたカールだが、お互いの悪いところも見せ合うことにより、より一層親子の絆が深まることを実感していたのかもしれない。