底抜けの前向きさ

映画「ビルとテッドの地獄旅行(原題:Bill & Ted’s Bogus Journey)」を観た。

この映画は1991年のアメリカ映画で、映画のジャンルはSFコメディだ。

この映画は、1989年の「ビルとテッドの大冒険(原題:Bill & Ted’s Excellent Adventure)」の続編で、2020年の「ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!(原題:Bill & Ted Face the Music)」の前に公開されている。

このビルとテッドシリーズでは、ビルとテッドが公衆電話の形をした電話ボックスでタイムトラベルをするというのが基本のベースになっている。「大冒険」でも「地獄旅行」でも「時空旅行」でも、公衆電話型のタイムマシーンが登場する。

そしてこれらの映画のすべてに共通するのは、ビルとテッドの馬鹿ぶりだ。「地獄に落ちたらメガデスのレコードやるよ」「ここ地獄だろ」「あそっか。じゃあやるよ」。何なのだろうか? いったいこれは?

ビルとテッドは底抜けに馬鹿なのだが、2人は底抜けに前向きだ。「地獄旅行」では、ビルとテッドは自分たちと同じ姿かたちの未来の反乱者でダーズベイダーの服みたいなのを着たデ・ノロモスに作られたロボットに殺されてしまう。

自分たちの体から幽体離脱したビルとテッドは、その状況に落ち込んでしまう時間というのが短い。未来からの使者という非現実的な者を受け入れるのも早かったが、自分たちの死という越えられないはずの現実を越えようとする。

「死んでしまったみたいだな」「よしじゃあ生き返らせてもらおう」。ビルとテッドは前向きにことに向き合う。ビルとテッドには深い思考というものがないから、物事を固定観念に縛られて思考することがない。それがビルとテッドの強みになっている。

ビルとテッドはラストシーンは、ステージの上で展開するというのがお決まりになっている。「大冒険」でも「地獄旅行」でも「時空旅行」でもそれは変わらない。ビルとテッドは、未来にロックで世界を救うというのがこの映画の前提だ。だからステージはこの映画では外せない。

ステージで演奏されるのは、ビルとテッドが好きなメタル音楽だ。ビルとテッドは、ギターを抱えて早引きのギタープレイを披露する。「大冒険」ではまだプレイは下手だが、「地獄旅行」ではトレーニングをしたということになっている。

しかしだ。痛快なギタープレイの音声とビルとテッドの手と指の動きは合っていない。しかしビルとテッドの体の動きは激しく、音声と体の動きの激しさ、そして合わない手と指の動きが観るものをなんだかわけのわからないが楽しい気分にさせる。

ビルとテッドは「エクソシスト」や「スター・ウォーズ」や「ターミネーター2」からの引用のセリフやシーンが観られる。お馬鹿なビルとテッドが、馬鹿なことを言いながら、非常にまじめな映画の引用をすると、その元ネタとなった映画の馬鹿さが浮き上がる。

ビルとテッドは観るものを笑いと脱力の世界に導く。そこには、底抜けの愉快さが実はある。“世界を救う”という大真面目さが、ビルとテッドにより骨抜きになりつつも、こんな人物なら世界を救えるかもしれないと思わせるアンビバレンツさがこの映画にはある。