自分が肯定されること

映画「ファイティング・ファミリー(原題:Fighting with My Family)」を観た。

この映画は2019年のアメリカ・イギリス合作映画で、映画のジャンルは伝記映画だ。

この映画は2012年に放送されたドキュメンタリー「The Wrestlers:Fighting with My Family」を原作とする映画だ。つまりこの映画は実話ベースだ。

この映画の主人公はプロレスラー一家で育った女性サラヤだ。サラヤはいわゆるゴスな女の子で、黒い髪に、黒いTシャツ、黒いパンツに、黒い革ジャンというような恰好をしている。

映画の中でサラヤはフリークと呼ばれる。Freakとはオタクとか、マニアとか、熱愛者とか、変わり者といった意味だ。サラヤはプロレスのリングの上でフリークと対戦相手に呼ばれる。

この映画はサラヤが自分自身を受け入れる成長物語としてもみることができる。

サラヤは周囲の環境に溶け込めない女の子だ。ガーリーな女の子たちから「あなた普通じゃないわね」と言われる。周囲の女の子たちから浮いているのがサラヤだ。このことにサラヤ自身も劣等感を持っている。

プロレスの名門WWEの選手養成所のNXTで同期の女の子たちに馴染もうと、サラヤは髪の色を黒から、みんなと同じ金髪に染める。しかしそれでも周囲の人と上手く馴染めない。なぜか?

それはサラヤが自分を偽っているからだ。自分を肯定する者しか他人を愛することはできない。この内容は例えば映画「迷子の警察音楽隊」にも描かれている。

エジプトからイスラエルにやってきた音楽隊の指揮者の初老の男は、イスラエルの女性を愛することができない。なぜか?彼には家族を失ってしまった暗いトラウマがあるからだ。彼は自分の過去への罪の意識から、人を愛することができなくなっている。サラヤもこの男性と同じように自分を愛することができない状況に一端は立つことになる。

しかし、サラヤはエジプトの初老の男がイスラエルに旅立ったのとは正反対に、自分のイギリスの家族の元へフロリダのNXTから帰る。するとそこには自分の家族がいて、自分のありのままの姿をサラヤは愛することができるようになる。

サラヤはステージとなるリングの上に上がって、対戦相手からフリークと呼ばれながら試合で勝利を収める。自分を肯定する家族以外の場所をサラヤはリングの上に見つけることになる。それは家族以外からのサラヤ自身への肯定だ。

それは、多民族国家であるアメリカがサラヤを受け入れたということもできる。移民を受け入れることで発展してきた国アメリカ。移民の国であるアメリカに新しいアメリカ人が誕生した。その姿に観客は自分の姿を重ねて、観客は感動する。