何を信じているか

映画「ジョジョ・ラビット(原題:Jojo Rabbit)」を観た。

この映画は2019年のアメリカ映画で、映画のジャンルはコメディ・ドラマ・戦争映画だ。

この映画の舞台は1945年ごろのドイツで、この映画の主人公はドイツ人の少年でアドルフ・ヒトラーをイマジナリー・フレンドとして持つジョジョ・ベッツラ―だ。

ジョジョの母ロージーは、ドイツに住みながら、ドイツ軍に対抗する女性だ。ドイツは第二次世界大戦中にユダヤ人の大虐殺を行っていた。ロージーナチスの手からユダヤ人少女を守って家にかくまっている。

ロージーの亡くした子供にインゲという女の子がいた。そのインゲの友達のユダヤ人をかくまっているのだ。そのユダヤ人の少女の名前はエルサという。

第二次世界大戦に2文字の言葉を当てはめるのならば、その2文字は熱狂だ。1960年代に世界中の若者がビートルズに熱狂したように、ドイツのアーリア人たちはナチスドイツに熱狂してしまった。

ポピュリズムという言葉がある。ポピュリズムという言葉をネットで調べると「大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢」と出る。例えば現在(2020.7.16)の日本。経済的に格差社会になり、それまであった中間層が消えて、人々は鬱屈した気持ちを抱えるようになる。

しかも鬱屈した気持ちを抱えるのは、階層の下のひとたちではなく、高所得者であるというねじれも存在する。感情的に劣化した人たちがメディアで流されるメッセージに右往左往する様子。それがいうなれば現在のポピュリズム熱狂だ。

ナチスドイツも同胞のアーリア人やイタリアや日本から熱狂的に迎られる。日独伊三国同盟というやつだ。つまりこれは悪の枢軸国だ。それに対するのは正義の連合軍だ。

この映画に連合軍の姿はちらっとしか登場しない。代わりにこの映画で描かれるのはナチスの少年と、ユダヤの少女だ。ナチスの少年のジョジョは、ポピュリズムに浮かされるただの少年だ。

多くの人と同じように自分の判断というものを持たない、多くの人がそうするから自分もそうするといったたぐいの少年だ。浮き足立った少年。ジョジョのことをそういうことができるかもしれない。

映画中ジョジョの母親はゲシュタポに捕らえられる。ジョジョ少年は、ドイツ人という同胞に自分の母親を殺されることになる。自分の信じたものに殺される母。ジョジョにとってドイツは正義だったはずだ。

しかし、正義が自分の愛する者を殺してしまう。ジョジョ少年は一体全体世界がどうなっているかわからなくなる。優しいユダヤ人の少女。母を殺した正義の国のはずのドイツ。少年が大人になるには、過酷な環境だ。

しかし、このような環境でも人は成長し、大人になることがきる。そしてその時人は本当の正しい価値観を持つことができるのだろうか?