人の可能性

映画「飛べないアヒル(原題:The Mighty Ducks)」を観た。

この映画は1992年のアメリカ映画で、映画のジャンルはスポーツ・ドラマだ。

この映画の主人公はゴードンという弁護士の青年だ。ゴードンは弁護士事務所で無敗の弁護士として働いているが、ある日、上司から「君は相手を挑発して勝つが、そのやり方はうちにはふさわしくない」と言われる。

それで気分を害したゴードンは飲酒運転をして、免停と500時間の社会奉仕活動を命ぜられることになる。そして、ゴードンはのちにダックスとなる少年少女のホッケー・チームをコーチするという社会奉仕活動を行う。

この映画の飛べないアヒルというのは、その弱小ダックスのことを指している。そしてゴードンも実は飛べないアヒルなのだ。

ゴードンは子供のころホッケーをしていた。その地区に社会奉仕活動に行くことになるのだが、実はゴードンはその地区の最も強いホッケー・チームに少年時代に所属していた。

そこでゴードンはコーチから言われた。「お前がシュートを外したら負けだ。絶対シュートを外すな。シュートを外したら負け犬だ。優勝以外は無に等しい」と。

ゴードンのコーチは、選手をコントロールして、試合を楽しむというより、試合にいかに勝つかを選手たちに教え込んだ。コーチは言う。「負けたやつはルーザーだ」と。

ゴードンは、やる気のないホッケー・チームのメンバーを最初は、自分の少年時代のコーチが言っていた通りに教えようとする。

しかし、ハンスという昔の親友というか父代わりになってくれた男にこう言われる。「勝つことが重要なんじゃない。楽しむことが重要なんだ」と。

社会学宮台真司の著書に「正義から享楽へ」というものがある。正しいことを楽しくない状態でしているのではダメだ。正しいことと享楽が結びついていないといけないと宮台真司は語る。

そうこの言葉は、ハンスがゴードンに言った言葉と同じだ。楽しくなければ人は達成に向かって進むことができないし、達成の後も楽しければ活動を持続することができる。ハンスの教えと宮台真司の教えは重なる。

この映画の中には、少女ホッケー選手も登場する。フィギュア・スケートの選手だった女の子が、ホッケー・チームに入り、活躍する。氷の上で回転するのだ。フィギュア・スケートの選手だったことを生かして。

それを見た敵チームの選手たちはあっけにとられて、ゴールを奪われる。男の子ばかりの中で、女の子が自分の得意分野を生かして活躍する。もしその得意分野がもっと広がっていけば世の中はもっと良くなる。

この映画は、そうも感じさせてくれる。飛べないアヒルたちが、飛ぶこともあり得る。そう信じさせてくれる映画だ。