男の世界、それは家父長制の世界

映画「無双の鉄拳(原題:Unstoppable)」を観た。

この映画は2018年の韓国映画で、映画のジャンルはノワール・アクションだ。

この映画の中心となるのは3人の男性だ。その3人の男性は兄貴分と弟分に分かれる。3人の中一番腕っぷしが強いのは、主人公のカン・ドンチョルだ。

この映画の背景には、闇の人身売買組織の存在があり、役立たずの警察の姿もそこにある。そしてもっと根本的なものとして、男尊女卑の世界がある。

男尊女卑の世界とは何か?それは男性が中心として回る世の中であり、女性が性の商品として奴隷のように飼育されている世の中だ。

この映画の主人公カン・ドンチョルもそのような男の世界に生きる男の中の1人だ。映画の開始30分までのカンは、自分の幸せのために妻の幸せを夢見る男だ。しかし、この映画の最後には、カンは妻の幸せを知る男となっているはずだ。

しかし、いったい女性の幸せとは何なのだろうか?それを簡単に言ってしまうとしたら、女性の幸せとは女性の数だけ存在するということだ。

家父長制の名残りの中で生きている韓国社会のカンにも、当然のように妻の幸せのために生きる生き方というものが存在する。それはそこに結婚制度を認め、女性を妻として迎える男性としての生き方というものを示す一例となっているのだろう。

当然そこにには女性を妻として迎えず、結婚せずに生きる生き方というのも存在しているのだが。

しかし、その生き方は多少難しいのかもしれない。なぜなら、女性と男性とでは扱いに差があるからだ。男性と女性の賃金差もそのうちの一つだろう。

もし女性が男性の家族というものに入らずに自立して生活できるだけの余力があったらどうだろう。そこで選び取られる結婚とは今よりも女性が主体的に選び取ることのできるものになっているだろう。

映画の内容に軽く触れる。

カンは美人の妻と暮らしているのだが、その妻が美人なことが理由で、人身売買組織にさらわれてしまう。その妻を誘拐した組織は何とカンに謝礼として鞄一杯の札束を贈る。女性の美を好む人間同士仲良くやりましょうという返礼だ。

カンは、その返礼を警察に預けて妻を助け出すために、警察の力には直接頼らず、アウトローとして自力で奮闘する。

女性の美に価値を見出す所では、カンも人身売買組織も変わらない。もしカンに分があるとすれば、カンは妻の自由をカンなりに願っているという点だ。

カンなりに?そんなことを言い出すと人身売買組織にも、彼らなりの自由の与え方があるのかもしれない。しかしカンは、人身売買組織のように女性に暴力を振るわないのは事実だが。