人と人との友情が、国同士の友情になる

映画「工作 黒金星と呼ばれた男(読み:こうさく ブラック・ヴィーナスとよばれたおとこ、原題: 공작)」を観た。

この映画は2018年の韓国映画で、映画のジャンルはスパイ映画だ。

この映画の背景にあるのは、第2次世界大戦後の朝鮮戦争による朝鮮半島の南北分裂だ。

映画「パラサイト 半地下の家族(原題: 기생충、英題:Parasite、韓国語の原題の意味は寄生虫)」で描かれた半地下の家族が、元は北朝鮮からの核兵器の攻撃から身を守るシェルターを再利用して作られたものだったことが物語るように、韓国では北朝鮮核武装解除が重要な問題となっていた。

当時の韓国の政権は、北からの脅威という図式を使って、自身の政権の安定に利用していた。「我々の敵は韓国内にいる共産主義者だ。みろ、北朝鮮は韓国に軍事的な挑発をしてくる。そうつまり北は悪だ。そんな悪によりそう政権に韓国がなっていいのか!!北に甘い韓国内の共産主義者に政権を渡してはならない」と。

現にこの映画の中では、韓国の政権が、北朝鮮に軍事的挑発を依頼して、韓国内の緊張を高めて、反北朝鮮を表明する現政権への支持を高めていたという事実が描かれている。

そうなぜか、韓国の大統領選挙になると北からの軍事的挑発が発生するのだ。

この映画で最終的に描かれるのは、北と南との対立ではない。この映画で描かれるのは北と南との友情だ。

この映画の主人公は映画のタイトルにある工作員(スパイ)の黒金星(ブラック・ヴィーナス)という人物だ。ブラック・ヴィーナスは、韓国から北朝鮮へのスパイだ。ブラック・ヴィーナスは、北朝鮮のリ・ミュンウンという所長に近づく。

リ所長は北朝鮮外資獲得のための役割に就く人物だ。ブラック・ヴィーナスは企業家になりすまし、外資が欲しいリ所長に近づく。リ所長はキム・ジョンイルに単独で会うことができる人物だった。だから韓国のスパイであるブラック・ヴィーナスはリ所長に近づいたのだ。

この2人は交流を深めるうちに2人の交流が、北と南との交流になっていく。北朝鮮で韓国の広告を撮りたい。それが2人の希望となってゆく。

最初ブラック・ヴィーナスは北朝鮮の核の情報を手に入れるために北朝鮮に入るのだが、次第にその目的は、北と南の友和という方向に向かう。

この映画の結末にスパイ同士の銃撃戦を期待していた人は肩透かしをくらうどころか、瞳に涙を浮かべるだろう。人と人との交流が、人と人との在り方のすべてだと、この映画は教えてくれる。北の人も、南の人もただ平和に暮らしたいだけだ。