愛されなかった分だけ、愛されたい

映画「キング・オブ・コメディ(原題:The King of Comedy)」を観た。

この映画は1982年のアメリカ映画で、映画のジャンルはサスペンス・ドラマ映画といったところだろうか?

この映画の主人公はルパート・パプキンという34歳の男だ。ルパートは自分のことをコメディアンと言っているが、実は人前ではコメディを披露したことがない。しかし、ルパートはテレビのコメディ映画に出て、一夜の王となることを夢見ている。

一夜の王とは、夜中に放送されるコメディのテレビ番組に出て人気者になるということだ。

この映画には実際の映画中の出来事とルパートの妄想が描かれている。映画での実際の出来事の途中でいきなりルパートの妄想が入り込む。ルパートの妄想は、ルパートが夜中の人気番組の司会者と会話しているところとして挿入される。

ルパートは人気番組の司会のコメディアンに気に入られて6週間番組を担当してくれと頼まれる。そうそれはルパートの妄想だ。

ルパートは貧しい生まれで、両親はアル中でろくに愛情を与えられずに育ったいじめられっ子だ。そんなルパートは一夜の王になることに人生を賭けている。ルパートはその夢に賭けているがために、テレビスターにまとわりつく人間になっている。

ルパートのような人物はこの映画の中でもう1人描かれている。それはマーシャという女性だ。マーシャもルパート同様両親から愛されずに育った女性だ。精神科医にかかっているらしい。

マーシャはルパート同様に夜の人気番組の司会のコメディアンのジェリーに強くこだわっている。ルパートとマーシャはジェリーの好意を手に入れたいがために始まった暴走で、ジェリーを誘拐することになる。

マーシャとルパートはジェリーを白いガムテープでぐるぐる巻きにして拘束する。マーシャはジェリーにセックスを強要し、ルパートはジュリーの身柄の引き渡しと引き換えに、夜の人気コメディ番組の出演を果たす。

そこでルパートがネタとして話すのが、自身の生い立ちだ。それは前述した通りにどん底の生活だ。

ルパートがなぜ夜のトークショーのコメディアンに憧れるのか?それは皆がその番組を好きだからだ。皆に好かれたいというのがルパートの本心なのだろう。少しの人間から好かれているのではなくて8700万人の人から同様に好かれたい。

それがルパートの思いなのだろう。なぜルパートが人々の愛情に飢えているのか?それは、ルパートが子供のころに周囲から愛されていなかったからだろう。愛情の欠如が、より可能性が低いが、得られる量は大きく見える人気を求める気持ちに変わる。

ルパートは愛されたくて愛されたくてしかたない人間だ。しかし、それはルパートだけのことだろうか?否、愛されたいのは皆同じだ。ただそれが与えられるかどうかが問題なのだ。