信じることが当たり前?

映画「イット・カムズ・アット・ナイト(原題:It Comes at Night)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で、映画のジャンルはホラーだ。

この映画には2つの家族が登場する。この映画の世界は、異常な事態が発生している。この映画の中で描かれる世界では、ある病気が発生していて、その病気とは感染症だ。

映画の冒頭で、ポールを家主とする家族のポールの義理の父親が火葬される。ポールの義理の父バドは、皮膚にふきでものができており、何らかの病気に感染している様子が描かれる。

バドを葬った後に残された家族は、ポールと、その妻サラ、そして2人の息子のトラヴィスだ。

ある時、ポールたちが住んでいる家に、ウィルと言う男がやって来る。ウィルは手荒い扱いを受けるが、ポールの元へ家族連れでやって来ることになる。

ウィルの妻はキムと言い、2人の息子はアンドリューと言う。

この映画の中で描かれる世界では、ポール一家は懐疑的な人たちとしても描かれている。それに対してウィルの一家は温和な家族だ。

ポールもサラもトラヴィスも警戒心がとても強い。ポールはトラヴィスに言う。「親切そうに見えても心を許してはダメだ」と。ポールの考えは、人は性悪であるから、信じるなというものだ。信じていいのは家族だけなのだと。

ホッブスリヴァイアサンという著書の中で、人は放っておくと争いを始めると言っている。人はすべての人が仲良く暮らすほどができるほど善良ではないのだと。

この考え方で、人間が生き延びる方法は、他人を常に疑いの目で見て、守りの態勢を崩さないあり方か、仲介者となるものを人と人との間に置くかだ。後者の仲介者として登場するのが国だ。時によっては王様であったかもしれないが。

要するにお互いが便益を得るための仲介役を契約により作り上げるのだ。

これに対して、国など必要ないという考え方もある。それは人の性が善であることを信じている人々が好む考え方だ。それをアナキズムという。

人は人を信じているし、人は人を殺すほど悪ではない。人と人との仲介役として登場した国家というものが、実は人と人との戦いの原因なのだ。そうアナキストたちは言うだろう。権力は腐敗する。

人は善なのに国家は悪だ。それがアナキズムだ。人は性悪か?この問いはなかなか解けないもののように思われる。しかし、先の大戦を思い出してもわかるように、戦争を始めたのは国という崇高な共同体だ。だとしたらアナキズムに希望を見い出すことはできないのか?