家族とは何か?

映画「ブリグズビー・ベア(原題:Brigsby Bear)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で、映画のジャンルはコメディ・ドラマだ。アメリカの砂漠に、ジェームスという成人男性が隔離監禁されている施設(シェルター)があった。というのがこの映画の設定だ。

テッドとエイプリルという男女が、エイプリルがさらってきた男の子を育てたというのがこの映画の冒頭で、この映画の中心となる要素だ。

ジェームスは元はポープ―一家の子供で、テッドとエイプリルの子供ではなかった。エイプリルがジェームスをさらってきて、砂漠の中にあるシェルターで家族として暮らしていたのだ。

ジェームスは自分の父と母がテッドとエイプリルだと信じ込んでいる。しかし、当然のように狭い空間の中での生活はジェームスにとっては苦痛となっていた。そのジェームスを支えていたのが、ブリグズビー・ベアが主人公となったビデオ・テープだ。

ビデオ・テープの中のブリグズビー・ベアは、ジェームスに様々なことを教えてくれた。しかしある時、テッドとエイプリルそしてジェームスの共同生活は終わる。FBIがジェームスが監禁されている場所を突き止めたからだ。

ジェームスは実の両親の元に帰るが、実在の社会になじむことができない。ジェームスの頭の中はブリグズビー・ベアのことで一杯だ。しかし状況は変わる。

それはジェームスがブリグズビー・ベアは作り物で、実際の作者はテッドであることがわかったこと、そしてテッドの監督という役割を知ったということによる。そして誰でも監督になることがわかったこともその内に含まれる。

ジェームスは言う。「僕はブリグズビー・ベアを使って映画を作る」と。ジェームスの部屋の壁は映画の絵コンテで一杯になる。ジェームスと現実の社会が折り合いをつけるもの、それがブリグズビー・ベアの映画なのだ。

砂漠のシェルターで監禁されて育ったジェームスは当然社会に最初は適応できない。しかし、映画がジェームスと社会との仲介者となる。

ジェームスは映画中精神病院に入院することになる。それはジェームスの頭の中にはブリグズビー・ベアの映画のことしかなくなるからだ。目の前にある危機(=現実社会)に対して、ジェームスはブリグズビー・ベアの映画を通じて向き合うことになる。

ジェームスは元の家族と今の家族との接続をなんとかすることに成功する。ジェームスは家族そして家族のようなものにより生きていくのだ。