女性の地位向上と同性愛

映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ(原題:Battle of the Sexes)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で、スポーツ・コメディ・ドラマ映画だ。この映画の主人公はビリー・ジーン・キングという女性プロ・テニス・プレーヤーだ。

ビリー・ジーンはテニス業界の仕組みに疑問を持っていた。その疑問とは、男性プロ・テニス・プレーヤーと女性プロ・テニス・プレーヤーとの賃金格差だ。なぜプロのテニス・プレーヤーで男性と女性の間に8倍の格差があるのか?なぜ男は女よりも8倍も多くのお金を受け取ることができるのか?つまり男女の賃金格差への疑問がビリー・ジーンの間にはあったのだ。

この映画の中でビリー・ジーンは、全米テニス協会に対抗して、WTA(女性テニス協会)を立ち上げる。この団体は当然女性の権利確立のための団体だ。女性の地位の向上。それがビリー・ジーンの表立った目標だ。

ビリー・ジーンの動きに反応して、その女性の地位向上の流れに逆らう者が出て来る。その人の名はボビー・リッグスという。ボビーは賭け事が大好きなギャンブル依存症の元名テニス・プレーヤーだ。

そのギャンブル依存のために妻から離縁を申し込まれている身だ。ボビーは正直、男性と女性の地位の格差には興味がなさそうだ。ボビーの頭の中にあるのは、どうしたら妻が自分の元から去って行くのを止められるか?ということだ。

ボビーの妻はどうやらボビーよりも金持ちで、過去にボビーのためにお金を世話してやっているらしい。だからボビーはそんな妻に頭が上がらないのだ。だからボビーは余計にあがいて、妻に頭の上がらない状態から脱却するために女性を卑下しようとするのだ。実生活では真逆なのだが。

つまりボビーは女性の下で生きているために上に行きたくてしょうがないのだ。よの中で妻や女性が、夫に威圧されて暴力を振るわれているのとは、ボビーの立場はちょっと違う。女性が強すぎるために、男尊女卑をボビーは押し出す。

ビリー・ジーンの表面上の動きは、女性の地位向上だ。しかし水面下でのビリー・ジーンは同性愛者としての葛藤を抱えている。そしてこのことは、1970年代当時タブーとされていたのだ。

女性の権利獲得は表面的に表立って戦うことができるが、自分が同性愛者であることは水面下に隠しておく。ラスト・シーンのビリー・ジーンの涙は、この事実を表しているかのようだ。