男性優位の社会

映画「セールスマン(原題:Forushande)」を観た。

この映画は2016年のイラン・フランス合作映画で、男性中心的な世界を象徴するかのような映画である。映画の主要人物はエマッド(男)と妻ラナ(女)から成る夫婦である。

エマッドとラナは都会のマンションに住んでいるが、ある時マンションの地面をシャベルカーが掘り、マンションの壁が崩れてしまう。当然このマンションは誰も住まなくなる。エマッドとラナの2人は住む場所がなくなってしまうが、2人が所属する劇団の1人が、2人に住む場所を提供する。

この場所に住んでいたのは、売春を生業とする女性だった。2人がこの場所に引っ越した後に、彼女の客がやって来る。家にはラナ1人だった。ラナは訪ねて来た男を夫だと思い家の中に入れてしまう。そしてラナはその男に犯される。男はラナに外傷を負わせて、金を置いて立ち去る。

映画の終盤、エマッドは残された手掛かり(車のキーと携帯)から犯人の車を探り出し、居場所を突き止める。そして犯人に復讐しようとする。ラナを犯したのは80歳ぐらいだと思われる男性だった。

そしてエマッドは男性の家族に事実を知らせようとするが、ラナの止めての言葉で思い留まる。エマッドは一発男の顔に強烈なビンタを食らわせる。

この映画はイランを描いた映画である。イランといえばまだ男尊女卑が強く社会に現れている場所である。女性は結婚した男性以外に肌と髪を見せてはいけない。妻の貞節が強く求められる。

この映画のようなケースの場合、女性を襲った男よりも、女性が夫以外の男を誘惑した(!?)というような風に見られることも十分あり得る。すべてが男性に有利に働き、女性は虐げられる。

この映画のものすごく奇妙な所は、女性が襲われているのにも関わらず、誰も警察に通報しない所だ。それは前述したように、襲った男よりも襲われた女性の方が加害者として見られてしまうというような理由からだろう。

男対女の事件で男に否があっても、警察は女性には味方しないのである。それほどまでにイランの男性優位の風潮は強いのである。

しかしこれはイランだけの問題か?いや違う。男性優位の風潮はこの日本でも、アメリカでも、世界各地でみられるものである。ガラスの天井という言葉がある。世間では女性と男性の平等が説かれているのにも関わらずに。

例えば一向に女性が大きな役職に就きにくいということが実際ある。透明で上方が見えるのにそこには頭に当たるガラスの天井がある。臆病者は見知らぬ帰結には達したがらないのだ。