共同で世界を作る

映画「神様メール(原題:Le tout nouveau testment)」を観た。

この映画は2015年のベルギー・フランス・ルクセンブルク合作映画で、神と、神によって作られた人間たちの物語である。

この映画の主人公はエアという女の子である。エアの母は女神で、父は神であり、エアの兄はイエス・キリストである。

エアの父である神は“無の空間”と呼ばれる出口も入り口もない家のある一室で、パソコンによってすべてのものを創造している。パソコンに情報を入力すると地上のものがその指示通りに動くのである。

神の神秘的な力は、パソコン入力によって生じるのである。パソコンで実際にできること、例えば書類を作るとか、ソフトを作るとかいう行為がどこか現実性を超越しているような気に我々をさせること、そのパソコンの不思議さ。それがこの映画の神の命令はパソコンにより生じるという現象により現されているようである。

エアの父は神なのであるが、その父は寛容で慈悲深い神ではなく、旧約聖書の神のように不条理な神なのである。エアの父である神は“普遍的な不快の法則”を人間に対して行う。貧しいものはさらに貧しくなり、富めるものは富に執着して家族を顧みなくなり、弱者はさらに虐げられる。そんな不快な世界を神は創造するのである。

さてエアはそんな神である父が嫌いである。そして家出をして、人間の世界に行く。そして人間の世界で兄のキリストのアドバイスに従って6人の使徒を人間たちの中から選び出す。

キリストは言う。「使徒なしじゃ何もできないよ。僕が選んだ12人の使徒の他にあと6人の使徒を見つけるんだ」と。

エアはヴィクトールという浮浪者に新・新約聖書の筆記を頼む。そしてヴィクトールとエマは6人の使徒たちを次々に見つけていくのである。

使徒の6人は社会的に不幸な者たちである。精神的に肉体的に不自由な人間たちである。その人に出会いエアはそれぞれの人の中にある音楽を聴き取る。エアには人間の心臓の音がクラシックやポピュラー・ミュージック、サーカスの音楽に聴こえるのである。そしてその音楽の音に人々は癒されていくのである。

エアの母である女神は、ずっとエアの父である神から酷い扱いを受けていたが、ある時キリストを囲む使徒の絵の人物が18人になっているのに気付き、それを機に人間の世界が再生される。

18は女神にとってのラッキー・ナンバーで、良いことが起こる前触れなのである。母と娘。弱き者たちの勝利で映画は終わる。