現実と非現実

映画「アルタード・ステーツ/未知への挑戦(原題:Altered states)」を観た。

この映画は1980年のアメリカ映画で、人間の変性意識状態をSF的な映像を駆使して描いた映画である。

この映画の原題であるAltered statesとは変更された状態という意味であり、altered state of consciousness=変性意識状態という熟語と類似している。そのためAltered statedは変性状態と理解することも可能であろう。

変性意識状態とは、日常の意識の状態とは異なる意識のことであり、この変性状態を映画では、アイソレーション・タンクによってもたらせられる意識の状態や、ドラッグのようなものが生じさせる意識として描かれている。

アイソレーション・タンクとは感覚を遮断するための装置で、リラックスを目的として使われるタンクである。アイソレーション・タンクの中には塩水が入っており、人体はそれに浮かぶことができる。

この映画の主人公エディ・ジョサップ博士は、人間の変性意識に関心を持っており、人間は変性意識に入り、その中で原始の体験ができると信じている。

エディは人間の社会の外にある大いなる存在である神を信じておらず、人間は神なき後精神の内側に入っていくべきだと考えている。

映画中エディは何度も変性意識に入り、その変性意識の状態はコラージュ的な映像で表現されたり、顕微鏡的な映像などで表現されている。

この映画で描かれるのは変性意識の映像化であると同時に、主人公エディの成長である。エディは自身の研究に夢中で全く家族のことをかえりみようとしない。頭の中はいつもトリップした状態のことで一杯である。

エディには妻と2人の子供がいる。映画の最後、エディは変性意識から脱した後に初めて、我妻と子供に向き合おうとする。

エディは宗教的な幻覚に興味を持っている。それはエディが子供の頃善人だった父が、病気の苦痛を受けている事実を知ったショックが元になっていると語られる。この事実、つまり善人にも苦痛が与えられるという事実によりエディは無神者になる。

宗教が人を救わない事実があるのに人はなぜ宗教的な幻覚をみるのか?不利益な宗教が人間の変性意識を支配しているのは何故か?

その理由が知りたいためか、エディは変性意識による時間の逆回転、つまり先祖返りを求めるようになる。変性意識は原始の時代を語ることがあるのか?

しかしそんなことは2番目でいいのである。大切なのは今現在を受け入れることなのである。今現在がなければ未来も過去もない。映画の最後エディは今と向き合いそれで映画は終わるのだ。