2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

連載 アナーキー 第18回

⑱ 国とは想像上の虚構である。この事実は別に特に新しい事実ではない。多くの人によって言われていることである(例えば吉本隆明「共同幻想論」やベネディクト・アンダーソン「想像の共同体」)。国とは想像上のものなのだと。 プルートンもバクーニンもクロ…

連載 アナーキー 第17回

⑰ プルートンは近代アナキズムの前史であり、プルートンは連合主義を唱えた。つまり国より小さい単位を主な単位とする連合である。この場合決定権は国にはない。国より小さい単位に存在するのである。 バクーニンは無政府集産主義を唱えた。それは、生産手段…

統治権力を縛る

映画「追憶(原題:The Way We Were)」を観た。 この映画は1973年のアメリカ映画で、第2次世界大戦中に出会った2人の男女が、大戦も終わり、戦後になって青年期の終わりにさしかかるところまでが描かれている映画だ。 この映画の主人公はケイティー・モロスキ…

連載 アナーキー 第16回

⑯ まず生産手段について説明したい。 この世界のありとあらゆるものの内で、人間によって使用される物を2種類に大別することができる。生産手段と消費資料である。 生産手段とは、ものを作り出すために必要なもののことである。これに対して、消費資料とは使…

ザ・ビートルズ「ユー・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」対訳

ザ・ビートルズ「ユー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」対訳 ザ・ビートルズの曲の対訳をしてみました。 ザ・ビートルズ/ウィズ・ザ・ビートルズ/ユー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー 君はぼくをほんとにしっかりつかまえた ぼくは君を好きじゃない…

連載 アナーキー 第15回

⑮ プルートンは、連合主義と交換銀行などという点について採り上げた。プルートンで重要なのは前者の連合主義である。国ではなくより小さい単位の自治を確立すること。それが連合主義である。 日本では考えられないことかもしれないが、この連合主義に似た考…

連載 アナーキー 第14回

⑭ 次に近代のアナキズムの主要人物である、プルートン、バクーニン、クロポトキンについて述べたいと思う。 大澤正道の「近代アナキズム思想史」によると、それぞれに以下のような主義、在り方が当てはめることができる。 [大沢正道, 1971] プルートンは近代…

ザ・ビートルズ「デビル・イン・ハー・ハート」対訳

ザ・ビートルズの曲の対訳をしてみました。 ザ・ビートルズ/ウィズ・ザ・ビートルズ/デビル・イン・ハー・ハート 彼女の心には悪魔がいる 彼女は心に悪魔を持っている しかし、彼女の瞳はぼくをじらして苦しめる 彼女は君の心が離れて泣くつもりだ 彼女の唇…

古き階級社会

映画「ファントム・スレッド(原題:Phantom Thread)」を観た。 この映画は2017年のアメリカ映画で、イギリスの上流階級のファッション・デザイナーとその妻となるイギリスの労働者階級の女性とのドラマ、ロマンスを描いた映画だ。 この映画の背景にはいくつか…

連載 アナーキー 第13回

⑬ ディガーズの運動はピューリタン革命の最左翼を担った。ディガーズの運動は、中世以来の反封建主義闘争の最後の局面であったと前述した。 しかし、この反封建主義的闘争なるものは本当に終わりを迎えたのであろうか?憎まれるべき封建主義はどこかに消え去…

連載 アナーキー 第12回

⑫ アナキズムの源流は、イギリスのピューリタン革命を担った民衆運動で最も左寄りだと言われいるディガーズに見て取ることができる。 そして、アナキズムの繁忙期は19世紀から20世紀初頭である。 アナキズムの繁忙期の主要人物には、フランスのプルード…

連載 アナーキー 第11回

⑪ セックス・ピストルズ、マルコム・マクラーレン、無政府主義団体(シチュアシオニスト・インターナショナル)、ギー・ドゥボール、レトリスム、イジトール・イズ―、シュルレアリスム、ダダイズム。 これらの活動に共通するのはアナーキーな態度である。ど…

連載 アナーキー 第10回

⑩ シュルレアリストたちの既存の価値観に挑戦する態度は、無意識への傾倒という局面を迎えた。その様子は失敗の趣を呈しているかもしれない。「シュルレアリスムは行き過ぎた」と。 確かに無意識の追及のために、死に向かってしまうというのは良くないことだ…

民主化を閉ざすことはできない

映画「タクシー運転手 約束は海を越えて(原題:택시운전사、英題: A Taxi Driver)」を観た。 この映画は2017年の韓国映画で、1980年に実際に韓国の光州であった光州事件を題材とした映画だ。 1979年に韓国の独裁者だったパク・チョンヒが暗殺されると、その後…

連載 アナーキー 第9回

⑨ 人は無意識に身を任せると、何とも形容しがたい判断をする。否、判断すること自体が無効になるともいえるのかもしれない。 錯乱した自我ではなく、正常な自我でもないもの。それは何か? 自我か混乱して判断を下すのではない。はたまた正常な自我による判…

連載 アナーキー 第8回

⑧ そして、今ここでシュルレアリスムが問題としているのは、前近代からの分離という①の面ではなく、②の面ではないだろうか? つまり近代の合目的性がシュルレアリスムにとっての問題である。そしてそれは近代の特徴でもあるのだ。 目的のために無駄なく動く…

連載 アナーキー 第7回

⑦ 一方、シュルレアリスムはどのような運動だったのだろうか? ダダは、1918年に詩人トリスタン・ツェラによりスイスのチューリヒで「ダダ宣言」をした。これと同じようにシュルレアリスムも、1924年にシュルレアリスム宣言をしている。 シュルレア…

個人と国家

今回は3本の映画について書きたい。その3本の映画とは以下の映画だ。 一つは①「レボリューション‐米国議会に挑んだ女性たち(原題:Knock Down the House)」だ。この映画は、2019年のアメリカ映画で、ネットフリックスの制作した映画であり、2018年の民主党予…

連載 アナーキー 第6回

⑥ ピストルズが存在するよりも前の時代にダダイズムの人々は、キリスト教信者に対して否を突き付けていたのである。ただピストルズのようにキリスト教そのものを否定してはいないが。 既存の体制に否を突き付けるのがダダイズムであると書いた。 しかし、既…

連載 アナーキー 第5回

⑤ ダダイズムもシュルレアリスムもレトリスムも芸術を出発点として既存の体制への反抗を行った。芸術の活動が政治的態度をとったものだったということができる。 ダダやシュルレアリスムは第一次世界大戦(1914~1918)に対する反抗の活動だとみるこ…

連載 アナーキー 第4回

④ セックス・ピストルズが結成されたのは1970年の半ばである、1975年頃である。 セックス・ピストルズの思想面を支えているのは、特にセックス・ピストルズのマネージャーであったマルコム・マクラーレンと、セックス・ピストルズの曲の歌詞を書いて…