個人的な物語が共通の物語になる

映画「グッバイ・クリストファー・ロビン(原題:Goodbye Christopher Robin)」を観た。

この映画は2017年のイギリス映画で伝記映画だ。この映画の主要な登場人物は、父であるA・A・ミルン、その妻であるダフネ、2人の間の子供であるクリストファー・ロビン・ミルン、そしてクリストファー・ロビンの世話をするオリーヴだ。

この映画のタイトルにもあるクリストファー・ロビンとは有名な本である「くまのプーさん」に登場する人物であると同時に、実在の人物でもある。

くまのプーさんに登場するクリストファー・ロビンとは、くまのプーさんの作者のA・A・ミルンの実在した子供だ。クリストファー・ロビンとは本の中のだけの人物ではなく、実際にその本のモデルとなったクリストファー・ロビンが存在した。

クリストファー・ロビンくまのプーさんの本が世界中で大人気となったために、誰からも注目される存在となった。しかしクリストファー・ロビン本人はそのことをあまり好んではいない。

例えばクリストファー・ロビンは、寄宿学校に入学することになるが、そこでいじめにあう。いじめの原因はクリストファー・ロビンくまのプーさんに登場するクリストファー・ロビンのモデルであったことによる。

寄宿学校に入る前の生活もクリストファー・ロビンには好ましいものではなかった。動物園で動物を見ていると、熊と一緒に写真を撮ってくれと頼まれたり、アイスを食べていると「あなたもしかしてクリストファー・ロビン」と話しかけられる。

クリストファー・ロビンの世話をするオリーヴは映画の中でこう言う。「子供は家の中にいるのが好きなんです」と。

クリストファー・ロビンはただ父と母とオリーヴたちと家の周辺で仲良く暮らしたかっただけなのだ。それを理解していたのはオリーヴだけだった。

A・A・ミルン第一次世界大戦に兵士として出征する。そしてC・R・ミルンは第二次世界大戦に兵士として出征する。親子そろって戦争に行くことになる。それを恐れていたのは母のダフネだった。

戦争に行く前にクリストファー・ロビンは父にこう言う。「僕はプーのおかげで散々だった。プーは嫌いだ」と。しかし戦争から帰ってきたクリストファー・ロビンはこう言う。「父さんの作った話はすごい。世界中の人にぬくもりと幼さを与えている」と。

それに対して父A・A・ミルンはこう答える。「あのくまは私たちだけのものだ」と。世界中の人々にとってくまのプーの物語は私たちだけの物語であるのだろう。そしてこの映画の中で、父が言う私たちだけの物語は、世界中の人々の心の中に特別な物語として浸透しているのだろう。