視点が変われば視界も変わる

映画「ダウンサイズ(原題:Downsizing)」を観た。

この映画は2017年のアメリカ映画で、SFコメディ映画だ。この映画の主人公は、ポール・ノリス・サクラネックという中年男性だ。この映画のタイトルのダウンサイズとは、人間のサイズをダウンする、つまり人間を小さくしてしまうということだ。

例えば身長180㎝の人が12.9㎝になってしまうというような。人間が物理的に小さくなる技術が誕生したのがこの映画の世界だ。

ダウンサイズするとどんないいことがあるのか?例えば生活費が安くて済む。身長12.9㎝の人間の必要とする土地も食糧も。例えば衣類なども身長180㎝の人間が生活に必要とする分よりも少なくても済む。

つまりダウンサイズは生活費の節約になる。そして他にもダウンサイズの目的はある。それは人類の抱える問題の克服だ。人類の問題とは何か?それは人口過剰であり、異常気象であり、食と水の汚染、不足の問題だ。

ダウンサイズすれば、人間の消費する資源の量は減り、地球の環境に良いばかりでなく、人類自体の存続のためにも良いのだ。

この映画は前半の1時間と後半の1時間とにわけることができる。前半の1時間はポールがダウンサイズするまでのアメリカでの日常の物語だ。後半の1時間はダウンサイズして女性活動家ノク・ラン・トランと出会う物語だ。

ポールは映画の前半ではオードリー・ラスティグ・サフラネックと共に平凡なアメリカの国民として生活している。夫婦共にダウンサイズする約束であったが、ポールの妻オードリーはダウンサイズする最中に気が変わり、ポールの元から去る。

そしてポールは1人でダウンサイズした後の優雅なはずの生活を過ごすことになる。

しかし、ノク・ラン・トランとの出会いでポールの人生は一変する。ダウンサイズした後に生活することになる小規模な居住区の中にも貧富の差が存在したのだ。

ノク・ラン・トランは貧しい人々の生活のために、金持ちの人々の家で食べ残した食べ物や、スーパーの破棄処分される食べ物を配っている。つまり金持ちの生活の余剰分をノク・ラン・トランは配分しているのだ。

ノク・ラン・トランはベトナムの家をダム建設のために失っている。ダムの建設の反対運動をしたために、ノク・ラン・トランはダウンサイズされることになる。ノクは片足の膝より下がない。抗議活動が原因で何らかの事故に巻き込まれて失ったのだ。

ノクは言う。「人は死を意識した時に生きられるようになる」。アメリカの平凡な中年が新転地で見つけた生き方。それは私たちに何とも言えない爽快感を与える。