人と犬

映画「犬ヶ島(原題:Isle of Dogs)」を観た。

この映画は2018年のアメリカ・ドイツ合作映画で、ストップモーション・アニメーションによる映画だ。この映画の主人公は、小林アタリという少年と、その少年の友達であるスポッツとチーフという2匹の犬だ。

この映画の舞台は日本だ。この映画の中では、日本にメガ崎市という場所が存在し、その市長が小林ケンジという、小林アタリ少年との血縁者だ。小林家はこの映画の舞台となる時代の1000年前から犬を排除しようとしてきた一族だ。

小林ケンジは1000年続く伝統の通りに、犬たちを排除しようとする。小林市長は、医薬品会社、市権力、人口生命を作る民間企業、ヤクザを使って、犬たちの排除を進めようとする。

まず製薬会社は、動物の体に発生する病気を市内中にばらまく。そしてその病気にかかった犬たちを支庁の力によって隔離する。その後、犬の代用として、民間企業の作った人工生命を利用する。

犬の排除に反対するする人々に対してはヤクザを使い、賄賂を贈ったり、恐喝、脅迫、暴力をふるって権力に従わせる。

この過程で利益を上げるのは、人工生命体を作る企業だが、この民間企業を儲けさせるために、市、製薬会社、ヤクザが行動しているのだから、民間企業の利益が、市、製薬会社、ヤクザに還元されるのは明らかだ。

この映画の中で印象的に描かれているのは、犬という存在だ。犬は古くから人間に従うことで生きながらえてき動物だ。犬とは差別用語として、従順な無能力者を指す。映画中登場する犬で、人間の部下として当初存在しているのはスポッツだ。

そしてそれと反対に人間に従おうとしないのがチーフという犬だ。

映画中この2匹の立場は入れ替わる。スポッツは主人から独立し、チーフはアタリ少年に従おうとするのだ。

映画のラストには人間と犬との対等な関係というものが生じる。

この映画の中には大衆の姿ははっきりと登場しないが、小林ケンジ市長を支持するのは、小林ケンジ市長に洗脳された、もしくは洗脳されなかったが賄賂を渡された人たちだ。

この人たちは小林市長の犬ではなかったらなんなのだろうか?という疑問がこの映画を観ていると生じてくる。主人に対してただ従順であるだけの人間たち。その人間たちはきっと無能ではないはずだ。そう思えるシーンとして、トレイシー・ウォーカーという少女が描かれる。人間と犬だけでなく、人と人とも対等なのだ。