非合法な情報収集

映画「ザ・シークレットマン(原題:Mark Felt:The Man Who Brought Down the White House)」を観た。この映画は2017年のアメリカ映画で、FBIで副長官を務めたマーク・フェルトという人物についての伝記映画だ。

時は、1970年代でニクソンが大統領を務め、ベトナム戦争が抜け出せない戦争となったころだ。ニクソン大統領は、大統領選に勝利するために、ワシントンの民主党本部に侵入した(もちろんニクソン大統領当人ではなく、ニクソンの指令を受けた元CIAや元FBIの人間だが)。

このことは当時大スキャンダルになり、この事件、つまりウォーターゲート事件がきっかけとなって、ニクソンは大統領の職を辞することになった。マーク・フェルトはFBIで副長官を務めていたと前述したが、マーク・フェルトが副長官だった時の長官とはフーバーだ。

フーバーとは巨大な権力を持つ男だった。フーバーはFBIの力を使って膨大な個人情報を集めていた。そのターゲットはフーバーの恣意により決められていた。つまりフーバーはFBIの組織力を、自分の懐疑心を満たし、権力を維持するために利用していた。

そういうわけで、当時のFBIの元には膨大な量の個人情報があった。そのことを国民は知らなかった。当然のようにマーク・フェルトはその事実について知っていた。FBIの職員には、キング牧師を盗聴して、キング牧師の妻に、キング牧師の不倫の証拠を送りつけたりしている。

FBIは当時何でもありだったのだ。

マーク・フェルトは、フーバー長官が死んだ後に、残ったあらゆる秘密を知る男だ。例えば、ホワイトハウスの人間の家族や愛人についての情報もつかもうと思えばつかめたし、現につかんでいたのだ。

そして、FBIの盗聴の利用者にニクソンもなっていたのだ。

マーク・フェルトは、映画中「ニクソンはFBIを使って、民主党を盗聴していた」という。マーク・フェルトニクソンが犯罪者であるという事実をつかんでいた。大統領の秘密の犯罪まで知り尽くしていたのがFBIの副長官だったマーク・フェルトなのだ。

ちなみにベトナム戦争は、秘密の犯罪ではなく、公式な犯罪だったといっていいのかもしれない。

情報の非対照性が権力を生み出す。情報を持つ者が常に勝者たりえるとこの映画は語っているかのようだ。FBIは政府を敵に回して勝利した。情報をつかむことの重大さがここにはうかがえる。情報は力だ。この場合の情報の入手の方法は非合法的で、下劣だが。